The 73rd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Oral (Theme)

学校保健体育研究部会 » 【課題B】保健体育授業をいかに良質なものにするか

学校保健体育研究部会【課題B】口頭発表④

Wed. Aug 30, 2023 11:25 AM - 12:24 PM RY204 (良心館2階RY204番教室)

Chair: Yukinori SAWAE

11:40 AM - 11:54 AM

[学校保健体育-B-14] 聴覚障害者の学校体育における経験が成人期のスポーツ実施意欲に与える影響(ア)

*Hiroshi Ikegawa1, Mayumi Saito2 (1. Hyogo Prefectural Itami Kita High School, 2. University Of Tsukuba)

聴覚障害者は特別なルールや用具に対するアダプテッドの必要性が低く、既存のスポーツを実施することができる。しかし、令和2年度の成人聴覚障害者における週1日以上のスポーツ実施率は31.0%と、健常者の59.9%に比べて低いことが示されている(スポーツ庁, 2021)。成人のスポーツ実施に影響を与えるものとして、小学校・中学校・高等学校の体育におけるポジティブな経験が指摘されていることから、小学校・中学校・高等学校に在学する聴覚障害のある生徒が体育においてポジティブな経験をしていない場合、成人期のスポーツ実施意欲にも影響を与えることが考えられる。そこで、本研究の目的は、聴覚障害者の学校体育における経験が成人期のスポーツ実施意欲に与える影響を明らかにすることとした。 研究対象者は、中等度以上の難聴があり、小学校・中学校・高等学校のいずれかもしくは全てに在学経験があり、現在スポーツ実施意欲が低い成人聴覚障害者 5名とした。調査方法は個別の半構造化面接とし、「学校体育における楽しさに関する経験」「学校体育で聴覚障害が影響した経験」を調査項目として実施した。分析は、テーマティック・アナリシス法を用いてコーディングを行い、国際生活機能分類(I C F)をもとに検討した。 結果として、成人聴覚障害者のスポーツ実施意欲に影響を与えた体育での経験として、「体育の楽しさに影響を与えた経験」「体育での困難な経験」「配慮された経験」「集団の中での経験」「他者に対する想い」「障害理解」「種目のモチベーションに関わる要因」「スポーツへの想い」「体育に参加するための工夫」9 つのテーマが存在することが示された。スポーツ実施意欲に肯定的な影響を与える経験を得るためには、保健体育教師による環境因子や個人因子に着目した支援が有効であると示唆された。