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[学校保健体育-B-15] 不登校経験者を対象とした1年間の「からだ」の授業で獲得されるからだづくりの認識(保)
高校1年生の学習ノートを基に
【目的】神奈川県小田原市にあるA高校には不登校を経験した子どものみが入学するクラスがある.このクラスでは,①自分のからだを知る,②生活に役立つからだの機能や役割を学ぶ,③生涯にわたって健康に生活するために必要な知識・技術を学ぶことを目標とした「からだ」の授業が行われており,スポーツではなく自他のからだと自然を教材としたからだづくりが行われている.他方,教育科学研究会「身体と教育」部会ではからだづくりが体育科の基本目標であるという考えの下,古くからその認識項目が議論されてきた.無論,「からだ」の授業は体育ではないが,その目標はからだづくりそのものである.そこで本研究では,このからだづくりの認識項目を用いて, 1年間の「からだ」の授業で獲得される認識を検討した.【方法】分析材料は,A高校に在籍する2022年度の1年生82名が1年間の「からだ」の授業で使用した学習ノートとした.分析では,学習ノートの各記述を野井(2004)の認識項目を用いて,富川ら(2005)の方法で分類した後,各認識項目の獲得の有無を検討した.その際,森林ウォーキング,からだの使い方,ものづくりの3つの教材間で獲得される認識の偏りをχ2検定により検討するとともに,有意な分布の偏りが認められた場合は残差分析も実施した.【結果】本研究の結果,森林ウォーキングでは「その他」,からだの使い方では「からだの事実・法則・ねうちの認識」,「からだづくりの目的・方法の認識」,「からだづくりに対する感情の認識」,「生活の認識」,ものづくりでは「運動の技能・技術」,「運動に関する感情の認識」,「その他」の認識の獲得が有意に多い様子が示された.このような結果は,体育授業で獲得される認識を検討した先行研究(富川ほか,2005)とは異なる傾向を示唆するものであった.