The 73rd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Oral (Subdiscipline)

専門領域別 » 体育科教育学

体育科教育学/口頭発表④

Fri. Sep 1, 2023 11:25 AM - 12:44 PM RY103 (良心館1階RY103番教室)

Chair: Isamu Mitabe, Tomoko Ogiwara

11:25 AM - 11:40 AM

[11教-口-16] 学校体育指導要綱における「ダンス」の成立過程に関する研究

「既成作品(教材を教える)から創作・表現(創造的自己表現)への転換」を主体的で対話的な深い学びの視点から再考する

*naomi nakamura1 (1. Tokai University)

1947(昭和22)年の「学校体育指導要綱」は、「戦後体育改革のための種々の検討を、努力によって始めて形づくられた、いわば戦後学校体育の原点でもあり、学校体育の初めての指導要領ともいうべき」文書として全国に通達された。その中でダンスは、「音楽運動」に代わり「ダンス」の名称を採り、「既成作品」すなわち「教材を教える」から「創作」「表現」を中核に据え、具体的な内容に「創作法を学ぶ」と明記して「創造的自己表現」へと大きな転換がなされた。つまり、現行の学習指導要領での「ダンス領域」にも引き継がれている「生徒が自らの創意工夫を生かして、挑戦と試行錯誤を繰り返す中から、動きを選び出しつつ運動の原理原則を学んでいく」という学習の「方法」を明記した「学習指導要領」の原型ではないかと考える。ここでの転換は高く評価された面もある一方で、歴史の浅いこの分野の研究が未成熟であったこともあり、現場には指導法が十分に理解されないまま混乱を招き、時に批判の中を歩んできている。 本研究は、「ダンス」の名称変更とその内容決定に至るまでに焦点を当て、児童生徒の探求的な学びの方法にまで踏み込んだ「創作」学習が認められた経緯を検討すること、また、当時奈良女子高等師範学校附属小学校の訓導兼教員であった松本千代榮が27歳と言う最年少の若さで「学校体育指導要綱」の委員に選出されている経緯、大きな転換で果たした役割を明らかにすることを目的とする。 松本の記憶を前提として語られている著述、インタビューと、その時期の資料との比較検討を行った。(1)戦後の体育の動向と音楽遊戯・音楽運動、(2)「学校体育指導要綱」策定に向けた会議、(3)「既成作品(教材・教えるダンス)」と「創作・表現(創造的自己表現)」①「学校体育指導要綱案」と「学校体育指導要綱」の比較、②「学校体育指導要綱解説6ダンス」篇、についての検討結果を報告する。