[03心-ポ-01] 感覚情報制御機能と抑制機能の関連性の検討
我々の日常生活やスポーツ活動中における抑制反応は、人間の認知機能にとって不可欠な要素である。抑制反応には、不必要な情報に対して無意識に抑制する「感覚情報制御機能」と動作を行わない・我慢するなどの「抑制機能」という2つの働きがある。本研究では、感覚情報制御機能と抑制機能について、生理指標として脳活動を計測し、それぞれの神経活動の関連性を検討することを目的とした。被験者は一般成人男性28名を対象とした。感覚情報制御機能を評価するため、右手正中神経に対し体性感覚連続刺激を呈示し、体性感覚誘発電位を記録した。各成分のS2(第2刺激)/S1(第1刺激)振幅比を算出した。抑制機能を評価するため、体性感覚刺激Go/No-go課題を用い、事象関連電位P300成分の振幅と潜時を算出した。実験の結果、電極FzではN30成分、電極C3’ではP22成分とN60成分において、体性感覚誘発電位のS2/S1振幅比が有意に1.0よりも小さく、感覚情報制御機能が働いたことが示された。体性感覚誘発電位S2/S1振幅比とP300振幅の関連性について、電極C3’のN60成分におけるS2/S1振幅比と、電極FzのGo-P300振幅、電極C3のGo-P300振幅、電極FzのNo-go-P300振幅は有意な負の相関を示した。そのため、感覚情報制御機能(N60成分)が働く人ほど、抑制機能に関わる神経活動が大きくなることが示された。さらに、体性感覚誘発電位S2/S1振幅比とP300潜時の関連性について、電極FzのN30成分におけるS2/S1振幅比と、電極CzのGo-P300潜時、電極C4のGo-P300潜時は有意な正の相関を示した。そのため、感覚情報制御機能(N30成分)が働く人ほど、抑制機能に関わる神経活動が速くなることが示された。