[03心-ポ-17] 中学校体育における動機づけ雰囲気がグリッドに及ぼす影響
目標志向性を媒介要因としたモデル検証
本研究の目的は、体育授業における動機づけ雰囲気、目標志向性、グリッドの関係について検討することである。目的を遂行するために、独立変数に動機づけ雰囲気(熟達雰囲気・協同雰囲気・成績雰囲気)、媒介変数に目標志向性(課題志向・成績接近志向・成績回避志向)、従属変数にグリッド(根気・一貫性)としたモデルを設定し、そのモデル妥当性について検討した。中学生を対象に質問紙調査を実施し、回答に欠損のない1201名のデータを分析に用いた。共分散構造分析の結果、適合度指標は基準値を満たす値であった。まず動機づけ雰囲気からグリッドへの直接効果のパスは、協同雰囲気と成績雰囲気が根気に正の影響を示した。これは協同雰囲気や成績雰囲気は直接的にグリッドの向上に寄与することを示唆している。続いて、動機づけ雰囲気とグリッドに目標志向性を媒介した間接効果のパスは、以下のとおり3点が明らかとなった。①熟達雰囲気と協同雰囲気は課題志向に正の影響を示し、その課題志向は根気と一貫性に正の影響を示した。②熟達雰囲気と成績雰囲気は成績回避志向に正の影響を示し、その成績回避志向は根気と一貫性に負の影響を示した。これらは熟達雰囲気や協同雰囲気の認知は課題志向を高め、そして課題志向の高まりがグリッドを促進させるが、その一方で、熟達雰囲気や成績雰囲気の認知は成績回避志向を高め、その成績回避志向の高まりがグリッドを低下させることを示唆している。③熟達、協同、成績雰囲気から成績接近志向に正の影響を示し、成績接近志向は根気に正の影響を示した。これは、熟達、協同、成績雰囲気の認知が成績接近志向を高め、成績接近志向の高まりによって根気が強まることを示唆している。以上のことから、総じて協同雰囲気を強調することがグリッド向上に有効であることが考えられる。一方、熟達雰囲気と成績雰囲気には生徒のグリッドの向上・抑制の二面性があることが示唆された。