[03心-ポ-51] スタート局面におけるアルペンスキー選手の心理的特徴
アルペンスキー競技は,旗門で規制されたコースをより速く滑走することを目的とし,スタートからゴールまでの滑走タイムを競う競技である(近藤・竹田,2016)。その競技特性は,他者と滑走タイムを競い合うことを前提としていることから,滑走中のミスが勝敗に大きな影響を及ぼすことが示唆される。
国内外におけるアルペンスキー競技を扱った研究は,滑走スピードや技術,雪面の状況,滑走コースの地形等の要因に関する検討が主な研究テーマとなっている。他方,スタート直前の心理的状態に検討した報告はない。深見ほか(2017)は,大学生アルペンスキー選手を対象とした研究において,実力発揮を阻害する要因について「自身のスタートが近づくにつれて,焦りから不安感情が生じることにより自信の低下や緊張状態となる」ことを報告している。このことからも,スタート局面における心理状態が滑走タイムに影響を及ぼすことが示唆される。しかしながら,これらの心理的特徴を生理的な指標から明らかにした研究はなく,検討の余地が残されている。そこで,本研究では,アルペンスキー選手を対象としたスタート局面の心理的特徴を生理的指標から検討することを目的とした。
本研究は,競技会に参加する大学生アルペンスキー選手11名を対象に,eVu-TPSセンサー(Thought Technology社)を用いた生体情報の収集および,得られたデータからスタート局面の心理的特徴を明らかにすることを試みた。具体的には,実験参加者の安静時および,練習時と競技会時のスタート直前のそれぞれに心拍変動及び皮膚コンセンダクタンスを測定した。3つの条件から得られたデータの平均値について分析を行った結果,競技会時の値が最も高かった。本研究の結果から,競技会における大学生アルペンスキー選手の生理的な特徴として,交感神経系の興奮がみられることが明らかとなった。