[09方-ポ-48] 体操競技、器械運動領域におけるAIを活用した運動評価のための基礎研究
鉄棒運動におけるけあがりを対象に
本研究の目的はOpenPoseを用いたバイオメカニクス的分析の限界と可能性を示すことで、AIを用いた運動の客観的評価による新たな指導法の可能性を提案するための基礎資料を提供することである。 本研究ではOpenPoseの精度検証のため、低鉄棒でけあがりを実施し、その試技を被験者の右側からデジタルビデオカメラにより60fps、露出時間1/1000秒で撮影した。コンプレッションウェアと現場での活用を想定するためジャージでそれぞれ2回ずつ試技を行った。分析範囲は離陸時から鉄棒の真下を通過し再度鉄棒の下を経過後、肩関節が鉄棒の真上に上がる支持局面までとした。また、VTR画面上の身体計測点6点の座標値を上記範囲について1フレームごと(60Hz)にビデオ解析システム(Frame-DIASⅤ)を使用し2次元DLT法でデジタイズした。平滑化した実座標データから、肩、股関節の角度を算出した。同映像をOpenPoseでも分析を行い、Frame-DIASで用いた点と同様の点を用いて肩、股関節の角度を算出し比較することとした。 本研究において肩関節における角度では開始時と終了時の値は二つの分析で同程度の値が得られた。しかしOpenPoseの分析では、正確な動作トレースが行えず全体を通じては同程度の結果が得られなかった。特に肩関節角度の分析が不正確だったが、これは肩関節最大屈曲と股関節最大伸展を行うところで体線が一本になるためAIが正確に体を認識できなかったからと考えられる。また股関節を屈曲しバーに足を引き寄せる局面では逆位の姿勢になるため正確な分析ができなかったと考えられる。 これらの結果からOpenPoseによる運動の評価は倒立や回転を伴うような逆位の姿勢になる技には不向きであることが示唆された。一方、跳び箱における開脚・閉脚跳びといった切り返し系の技では分析が可能であるか今後検証していきたい。