[03心-ポ-02] 競争下での自動模倣
共感性との関連も含めて
競争下での運動行動を明らかにする研究が、これまでに多大に行われてきた。これらでは、競争下での個人内の運動行動の変化を調べることが主流であったが、近年は個人間の運動行動への影響を調べる研究も行われ始めている。本研究は、競争下における個人間の運動行動を調べる研究の一環として、他者運動の観察が自己運動に影響する自動模倣に着目し、競争が自動模倣に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。さらに、自動模倣の機序となるミラーニューロンシステムの賦活には、共感性の高さが関与する(池田ほか、2016)。このことを参考に、競争下での自動模倣と共感性の関連も検討した。
大学生36名(男性18名、女性18名)を対象に、ディスプレイ上で他者の指上げ運動を観察しながら自己の指上げ運動を行う選択反応サイモン課題を行わせた。この課題における一致条件(他者運動と自己運動が同じ)と不一致条件(他者運動と自己運動が異なる)の反応時間差によって自動模倣を定量化した。この課題を非競争条件で60試行実施させるとともに、サイモン課題の早さと正確性の結果を基に3名中1名は4,000円の報酬が得られる競争条件でも60試行実施させた。そして、反応時間差について非競争条件と競争条件の平均値比較を行ったが、有意差は見られなかった。
共感性との関連については、多次元共感性尺度(鈴木・木野、2008)を活用した。全実験参加者にこの尺度に回答させ、「被影響性」「他者指向的反応」「想像性」「視点取得」「自己指向的反応」の5つの各因子の得点と反応時間差について相関分析を行った。その結果、「自己指向的反応」と反応時間差に有意な正の相関が認められた。これらの結果は、競争下での自動模倣の増減には個人差がある中で、自己指向的反応が強い個人は非競争下では自動模倣が生じにくいものの、競争下では自動模倣が生じやすいことを意味する。