[03心-ポ-06] 認知課題の遂行が精神的負担に及ぼす影響
球技スポーツの競技者には、精神的負担がかかる中で、相手や周囲に注意を向け、相手の行動や状況を判断して、次の動作や戦術を瞬時に実行することが求められる。このような競技者の状況判断は、実行機能と密接に関係していることはいうまでもない。実行機能とは、目標達成のための計画を立案し、行動や思考を抑制する高次機能であり(Miyake et al., 2000)、抑制、作業記憶、認知的柔軟性といった下位機能に大別される(東浦・紙上、2017)。これらの下位機能を測定する認知課題と精神的負担との関係について詳細に確認することができれば、状況判断場面での認知的な負荷を客観的に評価することが可能となるだろう。そこで本研究では、認知課題の遂行が精神的負担に及ぼす影響について検討することを目的とした。実験参加者は、体育系のA大学に所属する学生72名(実験1:男性12名、女性12名、実験2:男性12名、女性12名、実験3:男性12名、女性12名)であり、エディンバラ利き手テストによって右利きと判定された者であった。課題は、実験1ではフランカー課題(反応様式:Non-Cross、Cross)、実験2ではスタンバーグ課題(記憶負荷:3文字、5文字、7文字)、実験3ではタスクスイッチング課題(課題の種類:大小課題、奇偶数課題、混合課題)を用いた。また、精神的負担の評価には、日本語版NASA-TLX(芳賀・水上、1996)を使用した。その結果、知的・知覚的要求の得点は、フランカー課題ではCross条件がNon-Cross条件より有意に高く、スタンバーグ課題では5、7文字条件が3文字条件より、7文字が5文字条件より有意に高く、タスクスイッチング課題では混合課題が大小課題、奇偶数課題より有意に高かった。よって、認知課題の遂行が精神的負担に及ぼす影響としては、各課題の難易度に応じて異なる特徴をもつことが明らかとなった。