[03心-ポ-10] ブランコ漕ぎにおける見えない力の検討
VRブランコでの位相シフト
ブランコ漕ぎの増幅過程において、ブランコ座面と上体動との位相の漸進的なシフトが確認されている(Hirata, et. al., 2023)。この位相シフトの時間幅はブランコの1周期(およそ2500ms)あたり約10ms程度である。このように微細な動きが意図的に制御されているとは考えにくい。このように精緻な位相シフトは、見えない力、すなわち遠心力や慣性力などに導かれていると仮説をたてた。たとえばブランコの速度、振幅に比例する慣性力によって上体が背面方向に押されているとすれば、上体動は意図の有無に関わらず、約10ms単位の精緻な動きをしうる。上体の動きの大きさやタイミングから実ブランコ漕ぎにおける増幅量をほぼ正確に予測する力学モデルをVR(バーチャル・リアリティ)環境に埋め込み、VRブランコを実現した。VR環境を選択した理由は見えない力、つまり慣性力や遠心力が生じ得ないからである。本研究ではVRブランコ漕ぎにおける上体動を解析し、実環境におけるブランコ漕ぎと同様、位相シフトが生じるかを検討する。閉眼でも実ブランコを漕げることから分かる通り、ブランコ漕ぎにおける視覚の役割は限定的であり、視覚情報のみを呈示するVR環境でのブランコ漕ぎは極めて困難である可能性がある。本研究ではVR環境でブランコを漕げる実験参加者を10名程度集め、上体動を解析して上記の仮説を検証する。もしVRブランコにおいて位相シフトが生起しなければ、位相シフトは見えない力によって導かれている可能性が高い。周期的に運動するブランコと上体動との位相は、道具を使うヒトの周期動作の理解に有効な指標となると考える。