[03心-ポ-12] 時間制約および空間的不確実性の変化が打撃パフォーマンス及び打球運動に及ぼす影響
野球の打撃は打率3割を打てば1流といわれるほど難しいものである。本研究では、この難度の要因として、時間的制約と不確実性に着目する。時間的制約が厳しくなることや、反応すべき選択肢の数が増え不確実性が高まることによって課題成績の低下や反応時間の遅延が生じることが報告されている。しかし、実際に時間制約と不確実性を系統的に操作し、野球の打球運動やパフォーマンスに及ぼす影響を調査した研究は見当たらない。そこで本研究では、時間的制約と不確実性の増大が打撃運動の知覚-運動制御に関わる情報処理に制約をもたらすことで打撃困難になるとの仮説を検証することを目的とした。実験課題として、大学野球選手を対象としたVR(バーチャルリアリティ)上での野球の打撃課題を行った。時間的制約は投手のリリースからホームプレートまでの投球到達時間であるTTC(Time to contact)を操作した4つの条件(500ms・450ms・400ms・350ms)、不確実性は投球到達位置の垂直方向の標準偏差を操作した3つの条件(標準偏差小・標準偏差標準・標準偏差大)の合計12条件を行った。打撃パフォーマンスの指標として、バットとボールのコンタクト率、情報処理過程への影響を推測する指標として各投球コースの口頭での回答正答率、スイング軌道パターンを評価した。結果として、コンタクト率は時間的制約が厳しくなることで低下し、同じ球速でも不確実性が上がることで低下した。投球コースに関する正答率は低速度の場合に不確実性が高くなることで低下する傾向が見られた。投球スイング軌道に関しては時間的制約が厳しくなることで軌道パターンの減少が見られた。以上の結果から、時間的制約と不確実性が知覚や反応選択といった情報処理を制約することで打撃が困難になる可能性が示唆された。