[03心-ポ-38] 高い運動習慣を有する者における運動と認知機能の関係
運動は心身の健康維持・増進に効果的であるだけでなく、認知機能に対しても影響がある。運動習慣のある者は認知機能が高いことが報告されており、特に運動習慣が少ない者との比較が報告されている。一定以上の運動習慣を持つ者の中で比較した時、認知機能が向上する運動の効果は、運動量に比例するのであろうか。また、そうした効果は特定の認知機能に限定されるのだろうか、それともより全般的に効果が見られるのであろうか。本研究では高い運動習慣を持つ者を対象に、認知機能と運動習慣の関係を検討した。 実験に参加した大学生26名のうち、「健康づくりのための運動指針 2006」で推奨されている週23エクササイズ(EX)を超える運動習慣を持つ者23名(女性9名、男性14名、平均年齢20.13±1.71)を対象とした。運動習慣評価として、国際標準化身体活動質問票を実施し、1週間あたりの運動習慣を評価した。認知機能の評価としてワーキングメモリ課題(音韻、視空間、そして実行系の3種類)、Trail Making Test、そしてStroop課題を実施した。 EXと各課題のパフォーマンスとの相関を求めた結果、Stroop課題の一致刺激に対する反応時間との間に負の相関が見られた。高い運動習慣を持つ者ほど、Stroop課題における色と文字が一致している刺激に対して素早い反応をすることができたことが考えられた。一方、反応抑制機能を反映する不一致刺激に対する反応時間との間には相関は見られなかった。各ワーキングメモリ課題やTrail Making Testにおいても統計的に有意な相関は見られなかった。これらの結果から、運動習慣が増加することで単純な反応時間が短くなる可能性が考えられる一方、実行機能のような認知機能においては強い影響が見られない可能性が示唆された。