[03心-ポ-52] 大学生アスリートにおける認知的方略と心理的競技能力の関係
これまで、スポーツ領域では「不安が少なく、自信に満ち、否定的な思考が生じないことによって、最適なパフォーマンスが発揮される」と考えられてきたことから、否定的な思考を変容させ、否定的な感情を減ずることを目的とした研究や実践が行われてきた(有富,2022)。しかし、近年では、認知や感情を変化させることにより、逆説的効果(Wegner, 1994)や、逆にパフォーマンスが低下することが指摘されており(熊野,2012)、単に否定的な思考を肯定的な思考に変容させるのではなく、個人の特性を考慮した介入が求められている(有富・外山,2018)。この個人特性について、認知的方略が注目されており、パフォーマンスとの関係について検討することが求められている。しかし、スポーツ領域における認知的方略の研究は少なく、その特徴についても未だ不明な点が多い。そこで本研究では、アスリートの認知的方略の特徴について心理的競技能力から明らかにすることを目的とした。調査対象者は大学生アスリート215名であった。調査内容は認知的方略尺度(外山,2015)、心理的競技能力診断検査(徳永・橋本,2000)であった。分析の結果、大学生アスリートの認知的方略は4つの異なるパターンが存在することが示された(悲観主義群(RP群)、方略的楽観主義群(SO群)、非現実的楽観主義(UO群)、防衛的方略群(DP群))。次に、性別、競技レベルにおける認知的方略の4群の出現率については、いずれも人数の偏りはみられなかった。続いて、認知的方略と心理的競技能力の特徴については、「競技意欲」「自信」「作戦能力」「協調性」「総合得点」において、SO群とDP群はRP群、UO群よりも得点が高いことが示された。これらのことから、SO群とDP群は心理的競技能力が高いという特徴がみられ、競技場面で実力を発揮するには望ましい方略であることが示唆された。