[06経-ポ-01] 学校教育現場における女性教員のキャリア研究の動向と今後の課題
【はじめに】学校教育現場は、古くから女性の活躍の場となってきたが、男女間で職務配置に不均衡があることが指摘されている(飯島、2020)。さらに、管理職を志向する教員は、男性に比べて女性の割合が低いことが明らかになっている(国立女性教育会館、2018)。働く人のキャリアに関する研究は、主に一般企業の従業員を対象として理論化が進められてきた。しかし、一般企業と学校組織では人材教育制度や昇進システムが異なるため、学校教育現場における教員のキャリア特性を十分に理解する必要がある。【目的】本研究では、我が国における教員のキャリア研究の研究動向を概観し、学校教育現場における女性教員のキャリア形成の規定要因を明らかにすることを目的とした。また、それらを通して学校教育現場における教員のキャリア研究の課題、および今後の展望について考察した。【方法】2018年から2023年の期間に我が国において発表された学術論文のうち20編を分析対象とした。【結果および考察】まず、女性の管理職志向の阻害要因として、性別役割分業が明らかとなった。女性が家庭責任を負うことや校務分掌や人事異動制度等による「システム内在的差別」が存在することによって、ジェンダーに関する固定的な意識が、女性教員の効力感に影響を及ぼし、教職継続意欲や昇進意欲が弱まることが明らかになっている。一方で、学校マネジメント経験による職務達成感やロールモデルとの出会い、教員研修や社会的活動は管理職志向の促進要因になることが明らかになっている。しかしながら、教員のキャリアに関する研究の多くが質的研究となっており、一般教員の昇進意欲や規定要因について量的に検討している研究は少ない。そのため、量的・質的の両側面から教員のキャリア形成に与える影響について明らかにする必要がある。