日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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バイオメカニクス/ポスター発表

2023年9月1日(金) 13:30 〜 14:30 RY205 (良心館2階RY205番教室)

[05バ-ポ-14] 弓道における発射前の狙いと発射直後の矢の挙動および矢の着点との関係

*原田 隆次1,3、川上 泰雄2 (1. 国際武道大学、2. 早稲田大学、3. 早稲田大学 大学院スポーツ科学研究科)


弓道においては、標的を正確に狙いつつ、矢を繰り返し発射することが求められる。しかしこれまで、実射における発射前の狙いや発射直後の矢の挙動を分析した研究は存在しない。本研究は、発射前の狙いと矢の挙動、および矢の着点を比較し、弓道のパフォーマンスにおけるそれらの意義を明らかにすることを目的とした。  被験者は、大学生弓道選手9名であった。被験者は、屋内に設置された通常の競技環境同様の仮設弓道場(距離28m)において、2種類の矢(カーボン製,アルミニウム製)をそれぞれ20本ずつ発射した。矢以外の使用する弓具は被験者が普段使用しているものとした。矢の着点は的の中心から測定し、2次元座標(X軸=左右,Z軸=上下)として記録した。発射前の狙いと発射直後の矢の挙動については、矢に8つのマーカーを貼付し、3次元モーションキャプチャで撮影し、矢をモデル化した上で分析した。発射直後の矢の変数として、発射位置、発射角度、初速度、矢の曲率、空気抵抗を考慮しない予測着点(以後予測着点)、初速度ベクトルに対する矢の角度を算出した。その結果、カーボン矢・アルミニウム矢双方において、矢の着点と予測着点は上下左右でそれぞれ中程度の正の相関関係が認められた(カーボン矢:X軸: r =0.56, p<0.01,Z軸: r =0.52, p<0.01;ジュラルミン矢: X軸:r =0.43, p<0.01,Z軸:r =0.46, p<0.01)。しかし、狙いと矢の着点、狙いと予測着点には明確な相関関係はみられなかった。これらの結果は以下のことを示唆する。すなわち、①矢の着点は矢の初速度ベクトルにある程度依存するが、空気抵抗の影響が大きいため誤差が生じる。②矢の着点には、発射直前の狙いよりもむしろ発射後の矢の挙動が影響を及ぼす。