[04生-ポ-35] 心拍変動解析を用いた至適運動強度の同定に関する研究
安全性と有用性の検討
我々はこれまでに漸増負荷運動中の心拍変動(HRV)を解析し、換気性閾値(VT)に近い強度で閾値様の変化が認められることを報告した。このHRV閾値(HRVT)はVTよりも早く出現することが多いため、運動への応答を鋭敏に捉えていると考えられ、健康づくり等の至適運動強度として有用であることが予想される。本研究は、HRVTの出現した負荷と心拍数に合わせた運動の前後に各種ストレス指標を測定し、HRVTの安全性と有用性を検討した。男子大学生9名(年齢19.9±0.9歳、身長173.1±5.5cm、体重67.7±6.8kg)を被検者として、自転車エルゴメーターを用いた疲労困憊までの漸増負荷運動を実施し、呼気ガス分析からVT、HRV解析からHRVTを求めた。その後、HRVTの出現した負荷と心拍数に合わせた30分間の運動を実施し、運動開始前、運動終了直後、1時間後、2時間後および3時間後における血中乳酸値と酸化ストレスレベル(d-ROMs)を測定した。その結果、VT-VO2は 25.0±3.2 ml/kg/min(56.7±2.9 %VO2peak)、HRVT-VO2は 22.0±2.8 ml/kg/min(51.3±3.0 %VO2peak)であり、VTよりもHRVTの方が低い負荷で出現した。VT-HRは138.0±14.0 bpm、HRVT-HRは131.8±12.4 bpmであった。ストレス指標はいずれも、HRVTの負荷に合わせた運動では運動終了直後に他の4回の測定値よりも有意に高かった(乳酸値:p<0.01、d-ROMs:p<0.05)ものの、心拍数に合わせた運動では運動前後で有意な変化は認められなかった。以上の結果から、VT強度よりも低いHRVT強度での運動は安全性に優れ、特に心拍数に合わせた運動はストレス指標も増加せず、健康づくりに用いる運動強度としての有用性が高いことが示唆された。