[10保-ポ-02] 保健の学習に活用するための生活に基づく概念の整理
人間は日常経験から自然現象に関する自分なりの理解を作り上げている。保健に限らず、学習場面でそれらの概念が課題となったり、学習に活用されたりする場面がある.例えば、田島(2003)らは,教室文脈で概念を理解しているように見える学習者が, 日常経験知など他の社会文脈における知識との関連づけの解釈を求められた場合に応答できず,かれらの理解の成立が疑問視される現象を分かったつもりと呼び、説明活動による理解の促進を試みている。一方で、藤岡(1989)は、よい問題の4つの基準として具体性、検証可能性、意外性、予測可能性をあげているが、このうちの意外性は日常経験による自然現象の自分なりの理解と教室文脈との齟齬が関わると予測される。このような概念は、素朴概念(naive conception)、日常概念(everyday conception)、誤概念(misconception)などと表現されるが、Millar(1989)によると、mis-、alternativeなど形容する言葉とidea、meaningなど学習者の知識を表す用語との組み合わせの数があるとされる。本研究では、保健の学習に子供の日常経験による自然現象の自分なりの理解を活用するという観点から概念整理するとともに、データベースを用いてキーワード検索し、過去の研究を整理することを目的とした。日常経験に基づいた自然現象に関する自分なりの理解を尊重し、科学的な概念を絶対視しないという観点からすると、誤概(misconception)よりも素朴概念 (naive conception)が適切であると考えた。「CiNii Reserch」により最も多くの論文が検出されたキーワードは素朴概念で537件であった。「Pub Med」で最も多く検索されたのがmisconceptionの11925件と、国内外で研究のアプローチが異なる状況が明らかにされた。