[08測-ポ-19] 握力発揮における最大筋力と力の立ち上がり率との関係およびその性差
筋力の評価は,新体力テストにおいて握力計による最大筋力Maximum Voluntary Contraction(MVC)測定が一般的である.近年VBTの普及もあって,力の立ち上がり率Rate of Force Development(RFD)が重視されるようになってきた.VBTはトレーニング現場においてスクワット種目などの多関節の運動様式で検討されている一方,負荷重量を伴わない握力におけるMVCとRFDの関係は十分検討されていない.本研究は握力発揮におけるMVCとRFDの関係について,その性差を踏まえて検討することを目的とした.対象は健康な大学生104名(男性54名,女性50名)であった.測定は多用途筋力計PrimusRS(BTE)を用いた. RFDの測定は「始め」の合図で一気に素早く力発揮をし,それを5秒間維持する形式で2回測定した.力発揮開始から50ms,100ms時点の割合(以下,50RFD,100RFD)を算出した.MVCは利き手で2回測定した.各変量間の関係についてピアソンの積率相関係数を算出した.男性と女性をプールしたデータにおいてMVCとRFD間の相関係数を算出した結果,中程度の値が認められた.握力MVCとRFDの関係については,筋力発揮開始から90ms以降のRFDはMVCと関連が高いと報告されている.しかし本研究において,性別にMVCとRFDとの相関係数を算出した結果,男子においてMVCと100RFDとの間に低い相関係数(r=0.218)が認められた以外は全て0.1未満の相関係数であった.従って,握力測定におけるRFDはMVCをほとんど反映せず,100ms以前のRFDは主に神経機能を評価推定していると推測される.同じ握力の発揮であっても,それぞれ推定領域が異なり,握力におけるパフォーマンス評価の際には目的に応じた指示やトレーニングが必要と考えられる.