[08測-ポ-32] マルチモーダル感覚刺激を用いた柔道選手における感覚優位性の検討
我々を取り巻く環境は常に変化し続けており、五感に加えて、固有受容覚、前庭覚を用いて周りの状況を知覚している。これらの異なる感覚情報は別々に知覚されるのではなく、同時に知覚されることで感覚が統合され、正確な状況把握やそれに応じた反応動作が可能となる。特に、スポーツ場面においては、様々な変化に対して素早くかつ正確に反応動作を実行する必要があり、適切な反応動作を実行するためには、感覚統合が重要となる。スポーツの中でも柔道は、相手と直接組み合った状態において、相手を制し、技によるポイントを競い合う競技である。そのため、組手から相手の動きを知覚し、それに伴う反応動作(技)を施すことが求められる。古くから柔道の指導現場において、「組手から相手の動きを感じられるようにする」ということが言われてきた。組手による感覚情報が重要であることは、経験的に理解されているが、柔道選手の感覚優位性や反応特性は明らかにされていない。そこで本研究では、柔道選手における様々な感覚情報に対する反応特性と感覚優位性を明らかにすることを目的とした。実験方法として、異なる感覚刺激に対する単純反応課題、およびマルチモーダル刺激(多重感覚刺激)に対する選択反応課題を実施し、反応動作は全て手指によるボタン押しとした。刺激には、視覚、聴覚、触覚の3つの感覚刺激を用いて、単独で提示するユニモーダル条件、2つを組み合わせて同時に提示するバイモーダル条件、3つを 同時に提示するトリモーダル条件を設定した。その結果、感覚刺激を単独で提示するユニモーダル条件に比べ、感覚刺激を2つ以上組み合わせて提示するマルチモーダル条件で反応時間の短縮が認められ、多重刺激による反応の足通が示された。さらに、これらの結果に基づいて、マルチモーダル刺激に対する反応時間、エラー率、応答順の指標から感覚優位性の特徴について検討した。