[11教-ポ-16] 赤城少年院における「体育指導」実践の事例的検討
本研究は、少年院における矯正教育「体育指導」を体育科教育学の観点から考究することを企図している。本報告では、赤城少年院(群馬県)における体育指導の具体的な実践を事例的に検討し、その様相を明らかにすることを目的とする。 赤城少年院における体育指導は、年間276.6単位計画されており、体力づくりに主眼を置いた基礎トレーニングに加えて、各種スポーツ教材が特別活動指導(体育行事)と関連付けて実施されている。この中で、2023年5月に実施されたサッカー実践の2つを対象とし、期間記録法(Lesson Study Analyst for PE)を用いて、各授業場面の時間割合と出現頻度、および教官の運動従事時間を観察・記録した。実践(50分、実践1:男子8名、実践2:男子12名)は、両実践とも準備、基礎トレーニング、休憩、サッカーの基礎練習、ミニゲーム、片付けという展開であった。指導は、教官(1名:指導歴5-6年)、副教官(2-3名)、補助教官(2名)の体制である。なお、教官は保健体育科教員免許を取得しているわけではない。 観察・記録の結果は、学習指導(実践1:14%・17回、実践2:9%・12回)、マネジメント(実践1:29%・11回、実践2:25%、18回)、認知学習(実践1:3%・2回、実践2:10%・8回)、運動学習(実践1:55%・18回、実践2: 56%・18回)であった。また、教官(副教官等含む)が運動学習の際に一緒に運動に従事した時間は、実践1が約26分(96%)、実践2が約18分(62%)であった。 少年院における体育指導ではマネジメントに費やす時間が必然的に多くなるが、赤城少年院では、義務教育学校における教科体育の運動学習時間と同程度が確保されていることが明らかとなった。また、教官の運動従事時間の割合が高く、共動的指導といった特徴が認められた。