[09方-ポ-01] 東欧圏におけるスポーツ科学の歴史的展開についての研究
アスリートの準備における一般理論を中心に
1956年オリンピックメルボルン大会において、旧ソ連の金メダル獲得数がアメリカを上回るという競技スポーツ史上稀にみる出来事が生じた。この事実が裏付けとなり、冷戦後のソ連を中心とした東欧諸国のエリートスポーツ政策により、競技力向上を目指したスポーツ科学の諸領域が飛躍的に発展したと考えられている。その中でも「アスリートの準備における一般理論」は、現在に至るまでその有効性が世界的に継承されている。このようなスポーツ科学の発展については、旧ソ連が複数の共和国から構成される連邦国家であったことは留意されず、一括りにスポーツ大国=ロシアに依拠するものと一般的に捉えられてきた。しかし、キエフ・ルーシ公国の時代から歴史的に地政学上重要な位置にあり、旧ソ連時代にはモスクワ、レニングラードに続く第3の都市であったキエフを首都に置くということからも、ウクライナがスポーツ科学の発展に重要な役割を果たしていたことは想像するにたやすい。また、スポーツの実践面において多くのウクライナアスリートが国際的に活躍している事実からもその仮説の裏付けとなると考えられる。 そこで本研究では、ウクライナにおけるスポーツの理論・実践の中心的役割を担っている高等教育機関が発刊する学術誌「オリンピックスポーツの科学(Наука в олимпийском спорте)」に掲載された文献のうち、下記に示す5つの重要文献を詳細に分析し、東欧圏におけるスポーツ科学発展における歴史的経緯を整理することにより、「アスリートの準備に関する一般理論」の学問的発展過程を明らかにすることを目的とした。 <分析対象文献> 1.ウクライナのスポーツ科学:歴史のページ、2.アスリートの準備の一般理論、 3.スポーツの勝利における科学的基盤、4.アスリートの準備における理論の発展、 5.オリンピックスポーツの理論と実践に関する基礎・応用科学研究