[09方-ポ-03] 競技スポーツにおける不適切な指導行為に対する指導者と選手の問題性認知
パワーハラスメントに着目して
競技スポーツにおいて不適切な指導を無くすことは重要な課題であるが、たとえ指導者は問題がないと考えている指導行為であっても選手にはそうではないかもしれないし、その逆もありえる。したがって、適切な指導環境を構築するにはそれぞれの立場での認知の相違を検討する必要がある。本研究では、パワーハラスメントに該当しうる指導行為に対する指導者と選手の問題性認知についてその差異を明らかにする。JOC強化指定選手13種目24名と指導者37種目74名を対象として、パワーハラスメントの類型および予備調査の結果から7つの指導行為(暴力・罵声・冷酷な態度・罰走・練習の禁止・休日の管理・一方的な指導)を対象とし、その指導行為の重大性を小・大の2段階で設定した合計14ケースについて、そのケースが問題行為であるかを4件法によって尋ねた。分散分析の結果、立場×指導行為×重大性の2次の有意な交互作用が見られた。下位検定の主要な結果として、「罵声」では立場×重大性の1次の有意な交互作用が見られ、「選手」で重大性の単純主効果があった。また、「重大性大」で立場×指導行為の1次の有意な交互作用が見られ、「休日の管理」で立場の有意な単純主効果が、「指導者」「選手」の両者で指導行為の有意な単純主効果が見られた。これらの結果から、指導行為毎の傾向を焦点にすると、全体的には指導者と選手の両者で評価が一致しているが「休日の管理」は重大性が高い場合に立場の差異があり、選手は重大性大のケースでは指導者よりも問題性を低く評価することがわかった。また、立場毎の傾向を焦点にすると、選手は「罵声」の重大性によって問題性の評価が変わること、更に、重大性が高いケースでは指導行為間の問題性の評価の差異が大きくなる傾向があり、対して指導者は指導行為の種類と重大性を問わず問題性を高く評価する傾向があることがわかった。