[09方-ポ-05] 競技者の自尊心・自己効力感・接近回避志向とセルフハンディキャップとの関係
準備性に着目して
高めた競技力を実際の試合で十分に発揮できないアスリートがいる。その原因の一つに、セルフハンディキャッピング(self-handicapping:以下SHC)があげられる。SHCは、自分が行おうとする行動がどのような結果を生み出すのかを予測して、その時点で自分に有利な解釈ができるようにする方略のため、学業やスポーツでの達成を阻害する非適応的なものであり、できるだけ回避するべきであると考えられている。しかし、SHCの下位因子である準備性においては、目標との関連をみる限り、高い不安やミスへの恐れといった側面は希薄であり、単に完璧さを求めて準備を行うといった肯定的側面を有していると考えられている (森年・伊藤,2010)。また、戸山ら(2019)は、社会的文脈が、競技者の目に見えない内面の基本的心理欲求を媒介し、競技者の動機づけ(なぜスポーツに取り組むのかという思考)に影響を与えるモデルの有効性を検証している。基本的心理欲求以外にも、競技者の目に見えない内面の心理的特性には、自尊心や自己効力感などが挙げられる。また、競技者の思考としては、SHCを挙げることができる。さらに、成功のためならリスクを進んで受け入れる利得接近志向や、その逆の失敗しないように慎重にリスクを避けるなどの損失回避志向もまた、競技者の思考として重要な研究課題になると考えられる。これらの関係性を構造的に明らかにすることができれば、挑戦する思考や失敗を成長の機会と捉えることができ、競技者育成に有用な知見を得ることができると考えられる。そこで本研究では、アスリートの基本心理欲求、自尊心、自己効力感および接近回避志向とSHCとの関係について、準備性に焦点を当てて検討することを目的とした。