[09方-ポ-12] ベンチプレスでの最大筋力発揮と最小速度閾値との関係
最大挙上重量の体重比に着目して
本研究は、ベンチプレスにおける最大挙上重量(1RM)の体重比に着目し、最大筋力発揮と最小速度閾値(MVT)との関係を明らかにすることを目的とした。レジスタンストレーニング経験の有無に関わらず健常な男女子大学生189名を対象とした。ベンチプレス1RM測定は、直接法を採用し、1セット目に10kg(女性)または20kg(男性)の重量で行った。2セット目以降は、前試技の平均速度と対象者の主観的運動強度を参考に2.5~20kgの範囲で重量を漸増させ、挙上に成功した最終試技を1RMとし、その平均速度をMVTとして評価した。試技は8セット以内で終了するように重量を調整し、適切なセット間休憩を設けた。これらの測定は、バーベル中央部に固定された慣性計測センサー(PUSH2.0, PUSH, Canada)により挙上局面の平均速度を計測した。また、全対象者の1RM体重比を参照し、第3四分位数を上位25%群(上位群)、第1四分位数を下位25%群(下位群)とした。その結果、ベンチプレス1RMの相対強度と平均速度との間には、非常に強い負の相関関係(r = -0.959)が認められ、1RM体重比とMVTとの間には、弱い負の相関関係(r = -0.482)が認められた。また、1RM体重比の上位群と下位群を比較した結果、1RM体重比は、上位群が下位群より有意に大きく、MVTは、上位群が下位群より有意に小さかった。さらに両群において相対強度と平均速度との間には、非常に強い負の相関関係(上位群:r = -0.975、下位群:r = -0.915)が認められ、それぞれ回帰式が得られた。このことから、ベンチプレスのMVTは、極めて安定した値であることが明らかとなり、トレーニング熟練度(体重比の大きさ)の要因の影響を受ける可能性が示唆された。