[CS1-3] Porphyromonas gingivalisの歯性感染は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態を増悪する
研修コード:2504
略歴
1983年3月 広島大学歯学部卒業
1983年6月 広島大学病院 医員
1984年8月 広島大学歯学部 助手
1995年6月 博士(歯学)広島大学
2001年8月 広島大学歯学部 助教授
2002年4月 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 准教授
2012年4月 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 准教授
1983年3月 広島大学歯学部卒業
1983年6月 広島大学病院 医員
1984年8月 広島大学歯学部 助手
1995年6月 博士(歯学)広島大学
2001年8月 広島大学歯学部 助教授
2002年4月 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 准教授
2012年4月 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 准教授
食生活の欧米化に伴い肥満人口が増加している。肥満の肝臓での表現型は脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis: NASH)である。NASHは進行性病変で,その10-25%は肝硬変,肝癌などの死の危険性を伴う疾患へと進展するため,適切な診断と早期治療介入が必要である。一方,歯周病原細菌 Porphyromonas gingivalis (P.g.)は動脈硬化巣などで検出され,全身の健康状態に悪影響を及ぼす。近年,NASHの進展に腸内細菌が関わることが報告されたが, P.g.歯性感染の関与は不明な点が多い。本発表では P.g.歯性感染がNASHの病態進行に及ぼす悪影響について供覧するとともに, P.g.を標的とした検査の有用性について述べる。
Ⅰ.P.g.歯性感染とNASHの病態進行に関する実験病理学的検討
1)歯周病原細菌の歯性感染は肝臓の炎症や線維化を促進する。
高脂肪食(HFD)NASHモデルマウスの歯髄から P.g.を感染させ,6週後の肝臓での変化を調べた。 P.g.(+)群では歯根肉芽腫が形成され,病巣内に P.g.が検出された。HFD- P.g.(-)の肝臓では脂肪化と軽度の炎症がみられた。これらの変化は,HFD- P.g.(+)でより顕著となり,小肝硬変様領域も出現した。 P.g.は肝細胞やKupffer細胞内に検出された。
2)P.g.感染は肝臓でのサイトカイン産生を促進する。
ヒト肝細胞株をパルミチン酸で処理し,脂肪化肝細胞とした。脂肪化肝細胞ではTLR2( P.g.-LPS受容体)発現が上昇し, P.g.-LPS刺激によるサイトカインやインフラマゾームの発現が著しく増加し, P.g.-LPSに対する感受性が亢進した。
3)歯科治療はNASHの炎症や線維化の状態を改善する。
P.g.歯性感染6週後にアジスロマイシン歯髄投与により P.g.感染を除去し,3週後の肝臓の変化を調べた。興味深いことに,歯科治療により肝臓の炎症や線維化の程度が改善した。
Ⅱ.NASH患者におけるP.g.を標的とした検査
1)P.g.血清抗体価陽性例は,線維化進行例が多い。
広島大学病院で脂肪肝/NASHと診断された患者200例の P.g.FimAタイプの血清抗体価と臨床病理学的所見の関係を調べた。脂肪肝/NASH患者では P.g.FimA type4抗体陽性例が多く, P.g.FimA type4抗体陽性例には線維化進行症例が多くみられた。
2)肝生検組織でP.g.が検出された症例は,線維化進行例が多い。
脂肪肝/NASH患者300例の肝生検組織での P.g.の免疫局在を調べ,臨床病理学的所見との関連を調べた。NASH患者(30%)の肝臓で P.g.が検出され, P.g.検出例は線維化スコアや血中の肝線維化マーカーが高値であった。
以上の結果より,歯性感染病巣から侵入した P.g.および P.g.-LPSは肝臓に到達し,NASHの病態を増悪させることから,歯科治療はNASH患者の治療戦略の1つとなる可能性が示唆された。
Ⅰ.P.g.歯性感染とNASHの病態進行に関する実験病理学的検討
1)歯周病原細菌の歯性感染は肝臓の炎症や線維化を促進する。
高脂肪食(HFD)NASHモデルマウスの歯髄から P.g.を感染させ,6週後の肝臓での変化を調べた。 P.g.(+)群では歯根肉芽腫が形成され,病巣内に P.g.が検出された。HFD- P.g.(-)の肝臓では脂肪化と軽度の炎症がみられた。これらの変化は,HFD- P.g.(+)でより顕著となり,小肝硬変様領域も出現した。 P.g.は肝細胞やKupffer細胞内に検出された。
2)P.g.感染は肝臓でのサイトカイン産生を促進する。
ヒト肝細胞株をパルミチン酸で処理し,脂肪化肝細胞とした。脂肪化肝細胞ではTLR2( P.g.-LPS受容体)発現が上昇し, P.g.-LPS刺激によるサイトカインやインフラマゾームの発現が著しく増加し, P.g.-LPSに対する感受性が亢進した。
3)歯科治療はNASHの炎症や線維化の状態を改善する。
P.g.歯性感染6週後にアジスロマイシン歯髄投与により P.g.感染を除去し,3週後の肝臓の変化を調べた。興味深いことに,歯科治療により肝臓の炎症や線維化の程度が改善した。
Ⅱ.NASH患者におけるP.g.を標的とした検査
1)P.g.血清抗体価陽性例は,線維化進行例が多い。
広島大学病院で脂肪肝/NASHと診断された患者200例の P.g.FimAタイプの血清抗体価と臨床病理学的所見の関係を調べた。脂肪肝/NASH患者では P.g.FimA type4抗体陽性例が多く, P.g.FimA type4抗体陽性例には線維化進行症例が多くみられた。
2)肝生検組織でP.g.が検出された症例は,線維化進行例が多い。
脂肪肝/NASH患者300例の肝生検組織での P.g.の免疫局在を調べ,臨床病理学的所見との関連を調べた。NASH患者(30%)の肝臓で P.g.が検出され, P.g.検出例は線維化スコアや血中の肝線維化マーカーが高値であった。
以上の結果より,歯性感染病巣から侵入した P.g.および P.g.-LPSは肝臓に到達し,NASHの病態を増悪させることから,歯科治療はNASH患者の治療戦略の1つとなる可能性が示唆された。