[CS2-1] 歯周病と関節リウマチ-現状と展望,歯科の役割-
研修コード:2504
略歴
1987年 新潟大学歯学部 卒業
1989年 新潟大学歯学部 助手(歯科保存学第二講座)
1997年 日本学術振興会特定国(長期)派遣研究員(オランダ・ユトレヒト大学医学部)
2001年 新潟大学歯学部附属病院 講師(総合診療部)
2004年 新潟大学医歯学総合病院 准教授(歯科総合診療部)
2005年 日本歯周病学会 学術賞
2006年 新潟大学医歯学総合病院 病院教授
2017年 日本歯科保存学会 学術賞
日本歯周病学会 専門医・指導医
日本歯科保存学会 専門医
1987年 新潟大学歯学部 卒業
1989年 新潟大学歯学部 助手(歯科保存学第二講座)
1997年 日本学術振興会特定国(長期)派遣研究員(オランダ・ユトレヒト大学医学部)
2001年 新潟大学歯学部附属病院 講師(総合診療部)
2004年 新潟大学医歯学総合病院 准教授(歯科総合診療部)
2005年 日本歯周病学会 学術賞
2006年 新潟大学医歯学総合病院 病院教授
2017年 日本歯科保存学会 学術賞
日本歯周病学会 専門医・指導医
日本歯科保存学会 専門医
1997年,関節リウマチ(RA)患者で歯周病の罹患頻度が高いことが初めて報告された。それ以降,歯周病とRAの関連について数多く検証され,その数は現在600編を超えている。当初,RA患者は手指の機能障害で口腔衛生不良となり歯周病を併発しやすいと考えられた。現在では,免疫抑制薬による易感染性や骨粗鬆症併発による影響も指摘されている。一方,歯周病や歯周病原細菌感染は,タンパクシトルリン化に伴う自己抗体の産生と免疫寛容の破綻をもたらし,RAを惹起する。さらに,これら2疾患の併発には共通リスク因子(遺伝素因,喫煙など)も影響する。このように,歯周病とRAでは双方向性の因果関係が示唆されている。
シトルリン化は,タンパクアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるアルギニンからシトルリンへの翻訳後修飾であり,内在性PAD-2・PAD-4はRAと関連する。環状シトルリン化ペプチド(CCP)に対する自己抗体(抗CCP抗体)もRA特異的な診断指標である。興味深いことに,歯周病罹患組織でもPAD-2・PAD-4や抗CCP抗体の発現は亢進する。Porphyromonas gingivalisもPADを保有し,生体組織タンパクをシトルリン化する。さらに,Aggregatibacter actinomycetemcomitansもleukotoxin Aにより好中球PADを活性化することが報告された。したがって,歯周病罹患局所のシトルリン化タンパクが全身に波及してRAを惹起する可能性は十分考えられる。これは,歯周治療でRAの病状が改善するという多くの報告からも支持される。さらに最近では,歯周病でのカルバミル化タンパクもRAに関与することが提唱されており,その作用機序の解明が待たれる。
炎症性サイトカインも歯周病とRAに関与する。演者らの検証では共通サイトカインリスク遺伝子多型は認められず,サイトカイン遺伝子の情報発現はepigenetic修飾に影響されている可能性が考えられた。インターロイキン-6(IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF)-αの遺伝子プロモーターDNAメチル化率は,歯周病とRAに特有なプロファイルを認めた。また,RA治療に用いるIL-6受容体・TNFの阻害薬はRA患者の歯周病も改善し,サイトカイン標的療法の有用性が示唆されたが,さらなる検証が必要である。
このように,歯周病とRAの関連のエビデンスは増えてきており,臨床現場でのリウマチ科と歯科との連携も益々求められている。歯科医師は患者情報を照会するだけでなく,歯周病の啓発活動を行う必要性があると考えられる。RA治療前の歯周治療,口腔ケア,口腔衛生指導は,炎症・感染リスクを軽減させ,RA治療効果に貢献することが期待されるからである。
本講演では,歯周病・歯周病原細菌感染によるRAの惹起や共通遺伝素因を中心に,歯周病とRAの関連の現状と展望について概説したい。さらに,医科歯科連携における歯科の役割についても併せて考察していきたい。
シトルリン化は,タンパクアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるアルギニンからシトルリンへの翻訳後修飾であり,内在性PAD-2・PAD-4はRAと関連する。環状シトルリン化ペプチド(CCP)に対する自己抗体(抗CCP抗体)もRA特異的な診断指標である。興味深いことに,歯周病罹患組織でもPAD-2・PAD-4や抗CCP抗体の発現は亢進する。Porphyromonas gingivalisもPADを保有し,生体組織タンパクをシトルリン化する。さらに,Aggregatibacter actinomycetemcomitansもleukotoxin Aにより好中球PADを活性化することが報告された。したがって,歯周病罹患局所のシトルリン化タンパクが全身に波及してRAを惹起する可能性は十分考えられる。これは,歯周治療でRAの病状が改善するという多くの報告からも支持される。さらに最近では,歯周病でのカルバミル化タンパクもRAに関与することが提唱されており,その作用機序の解明が待たれる。
炎症性サイトカインも歯周病とRAに関与する。演者らの検証では共通サイトカインリスク遺伝子多型は認められず,サイトカイン遺伝子の情報発現はepigenetic修飾に影響されている可能性が考えられた。インターロイキン-6(IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF)-αの遺伝子プロモーターDNAメチル化率は,歯周病とRAに特有なプロファイルを認めた。また,RA治療に用いるIL-6受容体・TNFの阻害薬はRA患者の歯周病も改善し,サイトカイン標的療法の有用性が示唆されたが,さらなる検証が必要である。
このように,歯周病とRAの関連のエビデンスは増えてきており,臨床現場でのリウマチ科と歯科との連携も益々求められている。歯科医師は患者情報を照会するだけでなく,歯周病の啓発活動を行う必要性があると考えられる。RA治療前の歯周治療,口腔ケア,口腔衛生指導は,炎症・感染リスクを軽減させ,RA治療効果に貢献することが期待されるからである。
本講演では,歯周病・歯周病原細菌感染によるRAの惹起や共通遺伝素因を中心に,歯周病とRAの関連の現状と展望について概説したい。さらに,医科歯科連携における歯科の役割についても併せて考察していきたい。