60th Annual Meeting in Autumn

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医科歯科連携シンポジウム

医科歯科連携シンポジウム4 糖尿病/慢性腎疾患

Sun. Dec 17, 2017 10:30 AM - 12:00 PM A会場 (メインホール)

座長:和泉 雄一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野)

[CS4-3] 糖尿病と慢性腎臓病

四方 賢一 (岡山大学病院新医療研究開発センター)

研修コード:2504

略歴
1985年  岡山大学医学部卒業
1992年  岡山大学大学院医学研究科修了
1992年  岡山大学医学部第3内科助手
1997年  岡山大学医学部附属病院第3内科同講師
1997~1998年 米国ハーバード大学ジョスリン糖尿病センター客員准教授
2006年  岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学准教授
2009年  岡山大学病院腎臓・糖尿病・内分泌内科 診療科長
2010年  岡山大学病院新医療研究開発センター 教授
2012年  岡山大学病院糖尿病センター副センター長
腎臓は生体の恒常性を担う重要な臓器であるが,様々な原因によって障害を受ける。慢性腎臓病(CKD)の概念は,2002年に米国腎臓財団(NKF)によって提唱された。CKDは単一の疾患ではなく,腎障害が慢性的に持続する病態の総称であり,①蛋白尿の存在など腎障害があることが明らかであること,または②糸球体濾過量GFRが60mL/min/1.73m2未満であることが,3カ月以上持続することと定義される。わが国では,1,300万人以上がこの基準を満たすと推計されている。GFRの測定にはイヌリンなどの負荷テストが必要であるが,近年,年齢,性別と血清クレアチニン値からGFRの推計値(推算GFR:eGFR)を計算することが可能となり,広く普及した。CKDの進行により末期腎不全に至り透析療法や腎移植が必要となるが,わが国の透析患者数は年々増加し,現在では32万人を超えている。さらに重要なことは,CKDは腎不全の原因となるだけでなく,心血管疾患の強いリスクである。近年の多くのコホート研究により,GFRの低下とアルブミン尿/蛋白尿は,虚血性心疾患や脳卒中の危険因子であることが明らかにされた。従って,CKDを診断して進展を予防することは,腎不全のみならず心血管死を予防するために重要となる。
CKDには様々な疾患が含まれるが,慢性透析療法の最大の原因疾患は糖尿病性腎症である。近年のわが国では,2型糖尿病患者の増加に伴って糖尿病性腎症からの透析導入が増加し,1998年以降は糸球体腎炎に代わって透析導入原因疾患の第一位を占めている。糖尿病性腎症からの透析導入は年々増加して2015年には約16,000人(全体の43.5%)となっているが,最近数年間はほぼ横ばいの状態である。糖尿病患者の透析導入後の予後は不良であり,糖尿病患者の生命予後とQOLを改善するためには,腎症の発症と進展を予防する必要がある。
糖尿病性腎症の典型的な臨床経過は,初期にアルブミン尿が出現し,たんぱく尿の増加に伴って腎機能が低下して末期腎不全に至る。JDDM研究等の結果から,わが国の2型糖尿病患者の腎症合併率は30~40%と推定されるが,この他に,アルブミン尿が陰性で腎機能が低下する症例が10%あまり存在することが分かっている。糖尿病性腎症を早期に診断するためには,定期的にアルブミン尿を測定することが必要である。上記のように,アルブミン尿が陽性となると腎不全と心血管イベントのリスクが上昇するため,強い治療介入が必要となる。糖尿病性腎症の治療には,血糖,血圧,脂質の厳格な管理とレニン-アンジオテンシン系の抑制,食事療法など,早期から多因子への介入を行う必要である。
本シンポジウムでは,糖尿病性腎症を中心に,CKDの疫学,予防,病態,診断と治療等についてお話ししたいと考えています。