60th Annual Meeting in Autumn

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歯科衛生士プログラム

歯科衛生士プログラム
超高齢社会!口腔ケアにおける歯周治療の重要性を考える

Sat. Dec 16, 2017 2:20 PM - 3:50 PM C会場 (アネックスホール)

座長:武井 典子(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(公益社団法人日本歯科衛生士会会長))、茂木 美保(公益社団法人日本歯科衛生士会専務理事)

[DHP-2] 歯科衛生士に求められる口腔管理の実際と今後

西 裕美 (広島大学病院 口腔総合診療科)

研修コード:2504

略歴
2000年3月 広島大学歯学部歯学科 卒業
2004年3月 広島大学大学院歯学研究科歯学臨床系(口腔外科学第二)専攻修了
2004年4月 広島大学歯学部 産学官連携研究員(口腔細菌学)
2005年4月 広島大学病院 医員(口腔顎顔面再建外科)
2007年4月 広島大学病院 助教(口腔顎顔面再建外科)
2010年4月 広島大学病院 助教(口腔総合診療科)
2012年4月 広島大学病院 診療講師(口腔総合診療科)
2012年12月 広島大学病院 連携口腔ケアサポートチーム副代表併任
近年,医療技術の発達や社会環境の整備により平均寿命が延び,QOLを重視した医療の質が問われている。また医療費適正化の流れから,出来高払いに代わるDPC方式が導入され,日本の医療は転機を迎えている。平成24年度診療報酬改定の基本方針では,がん医療をはじめとした様々な疾患において,チーム医療の促進が論点の一つとされた。これに伴い,有病者治療に伴う口腔内合併症の抑制が,早期回復や在院日数の短縮,患者満足度の向上に繋がることから,口腔内環境の改善に対する関心が高まっている。
実際,広島大学病院における医科領域から歯科領域への初診紹介は,平成22年度には月に数件であったものが,平成29年度現在では月に200名を越え,月ごとに増加し続けている。医療連携における歯科診療の場では,歯科医師・歯科衛生士が主病の治療前後に,口腔内の感染源除去を中心とした口腔管理を行い,口腔内のみならず全身的な感染症を予防する。さらに口腔内症状の緩和を通して,入院日数削減などの治療支援と,医療費抑制効果に寄与することが報告されている。
口腔管理により感染源除去を行い全身疾患の治療を支援することや,摂食嚥下・咀嚼・発音などの口腔機能管理により,患者の生活の質を高める試みを効率的に達成するためには,多職種連携を充実させることが必須とされる。しかし問題点として,①口腔環境を多職種と情報共有する共通言語に乏しいこと,②全身疾患の知識が不足するために必要十分な治療を適切な時期に行うことに躊躇することが,円滑な連携においてハードルとなっている。さらに歯科衛生士においては,病院に従事する歯科衛生士は,看護師はもちろん理学療法士や管理栄養士などの医療スタッフと比較して圧倒的に少ない現状があり,③歯科衛生士の存在の認知自体が乏しいという問題点が挙げられる。
多職種連携には歯科衛生士が必須という存在となるためには,歯科衛生士の専門性に対する信頼を得ることが重要である。そのためには根拠のある口腔管理・口腔ケアを提供,すなわちエビデンスに基づく管理を行い,他職種と共有できる口腔管理の方法を提案できることが必要である。また,口腔管理の重要性が認知されているにもかかわらず,その手技は未だ標準化されていないことから,疾患に応じて,エビデンスに基づく口腔管理体制を構築することが必要である。
今回我々は,口腔管理を行う専門家として多職種連携・チーム医療には歯科衛生士が欠かせない存在となることを今後の展望とし,当院の医科歯科連携現状を分析し,今後の課題について検討を行ったので概要を報告する。