60th Annual Meeting in Autumn

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歯科衛生士プログラム

歯科衛生士プログラム
超高齢社会!口腔ケアにおける歯周治療の重要性を考える

Sat. Dec 16, 2017 2:20 PM - 3:50 PM C会場 (アネックスホール)

座長:武井 典子(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(公益社団法人日本歯科衛生士会会長))、茂木 美保(公益社団法人日本歯科衛生士会専務理事)

[DHP-3] 口腔ケアの実際 ~歯科衛生研究を通して~

武井 典子 (公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)

研修コード:2504

略歴
1980年 東京医科歯科大学歯学部付属歯科衛生士学校卒業
1980年 ライオン(株) 口腔衛生部入社
1994年 ライオン(株) 退職,財団法人ライオン歯科衛生研究所入所(現在に至る)
2001年 放送大学教養学部卒業
2005年 新潟大学大学院医歯学総合研究科修了

博士(歯学),介護支援専門員
公益社団法人日本歯科衛生士会会長,日本口腔衛生学会理事等
歯科衛生士の就業者数は123,831人であり,その内112,211人(構成割合90.6%)が診療所に就業している(衛生行政報告,2016年)。そうした中,日本は超高齢社会を迎え,地域包括ケアシステムの構築が急がれている。歯科医療の提供体制も,従来の歯科診療所における外来患者中心の「歯科医院完結型」から「地域完結型」へと変化し,今後は地域でのきめ細やかな歯科保健医療の提供が求められる。すなわち,高齢化の進展にともない,診療所に通院できない高齢患者が増加するとともに,医科疾患の療養者や要介護者等,在宅療養者等に対する歯科訪問診療・訪問歯科衛生指導の必要性が増大する。また,チーム医療における医科歯科連携の推進に伴い,がん患者等への「周術期口腔機能管理」が導入され,医科疾患での入院患者に対する口腔機能管理の必要性が高まる。このため,歯科のない病院(全病院の80%)に対しても,歯科診療所からの訪問による入院患者への口腔機能管理など,医療との連携による歯科医療提供の機会が増える。
一方,厚生労働省が2016年秋に実施した歯科疾患実態調査結果では,8020達成者は2人に1人以上と過去最高となった。歯の寿命が延伸した中,う蝕は減少したが,歯周疾患(4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合)は各年代群ともに増加し,高齢になるにつれて高い割合を示している。従って,今後,超高齢社会の中で患者や国民が歯の寿命の延伸に伴う,いわゆる『要介護性歯周疾患』で苦しむことがない社会の実現が課題となってくる。
これらのことから,超高齢社会の中で歯周治療に果たす歯科衛生士の役割が益々増大する。さらに歯科衛生士の大多数を占める診療所の歯科衛生士が,診療所から地域や生活の場に視点を広げ,医療・介護と連携する中で歯科衛生士としての専門性を発揮することが期待される。この期待に応えるためには,研究的視点を持った臨床症例への対応,さらには生活者や患者の視点に立った医療技術の客観的な評価が重要になる。それらを具体的に推進するには,専門分野である『自然科学的研究』をベースに,得られた成果をより効率的に社会で応用するための方法論を検討する『社会科学的研究』,さらに生活者や患者の立場から見て十分な喜びと満足感に繋がっているかを客観的に評価する『人文科学的研究』,少なくとも3つの研究分野の視点が重要となる。
今回のシンポジウムでは,弊所で行ってきた高齢期の口腔ケアに関する歯科衛生研究を紹介する。カンジダ菌が多数検出されている高齢者への有効な義歯清掃法,無歯顎者への有効な口腔清掃法等の『自然科学的研究』,これらの研究をベースに施設や在宅へ有効な口腔ケア法をどのように効率的に提供・啓発したらよいかの方法論の開発と評価,さらに住民参加型の口腔機能向上によるフレイル予防の方法論の開発と評価等の『社会科学的研究』,これらが住民の喜びや満足感にどのように貢献したかを評価する『人文科学的研究』等である。歯科衛生研究は多岐にわたる視点から展開できることがその特徴であり,また魅力でもある。今回のシンポジウムを通して,そうした歯科衛生研究の特徴と魅力について,歯科衛生士の皆様と共有できることを願っている。