日本歯周病学会60周年記念京都大会

講演情報

歯科衛生士スイーツセミナー

歯科衛生士スイーツセミナー

2017年12月16日(土) 16:00 〜 17:30 C会場 (アネックスホール)

座長:坂上 竜資(福岡歯科大学口腔治療学講座歯周病学分野(日本歯周病学会歯科衛生士関連委員会委員長))

共催:医歯薬出版株式会社

[DHSS-1] 激変する社会は歯科衛生士に何を求めるのか-口腔の健康維持管理を担う専門職としての責任-

小原 啓子 (株式会社デンタルタイアップ)

研修コード:2504

略歴
株式会社デンタルタイアップ 代表取締役 小原 啓子
マネジメント(修士)・経営士・歯科衛生士(日本歯周病学会認定歯科衛生士)
経営士能力開発研究プログラムリーダー
・1980年 広島歯科衛生士専門学校(現:広島高等歯科衛生士専門学校)卒
・1980年~2006年3月 広島県歯科医師会勤務
   広島口腔保健センター,広島高等歯科衛生士専門学校担当
・2004年 産業能率大学経営情報学科卒
・2006年 広島大学大学院社会科学研究科マネジメント専攻(経営戦略研究室)修了
・2007年 デンタルタイアップ設立 代表
・2011年 株式会社デンタルタイアップに法人化 代表取締役
日本は,激動期です。
超高齢社会を手本とする国はすでになく,生産労働人口は減少の一途,国の財政も緊迫しています。
日本は,世界中の人が体験したことのない,新しい時代を迎えています。
しかし,こんな時こそ,新しい発想が生まれます。
過去において日本は,徳川幕府の時代に終わりをつげ明治政府が立ち上がったとき,第二次世界大戦からの復興など,社会の価値を180度変えてしまうほどの変化を乗り越えてきました。私たちは,もう何十年も前から今の日本をおぼろげながらイメージし,制度改革に対応し,個人としても覚悟し,一つずつの変化を受け止めてきました。しかし,予めわかっていた未来への対応は遅れがちです。私たちは,国民の健康を維持向上できる分野で仕事をさせていただいていることを自覚し,今こそ,今だからこそ,できることにチャレンジしなければなりません。
厚生労働省患者調査や社会医療診査行為別統計等からは,変化してきた口腔状況が明らかになっています。「健康日本21」での目標数値での12歳時のう蝕歯数は0.89歯,カリエスフリーは62%です。80歳で20本の歯を残す8020運動は,50%達成を成し遂げました。歯科疾患における予防管理は,大きな成果を上げています。そのような状況において,健康維持管理については「かかりつけ医機能」において更なる強化がはかられました。う蝕・歯周病の重症化予防,口腔機能低下の重症度予防,歯科疾患への包括的で継続的な管理が始まっています。今後,かかりつけ医の在り方については更なる改正が加えられる予定です。
これからの日本は,2020年までに行う「社会保障を含めた財政再建」,2025年に訪れる段階世代が75歳に達する段階での社会的対応として整えるべき「地域包括ケアシステム」。そして最大の難所が,団塊の世代の方々の人生の最終段階での対応に加え,段階ジュニアの方々が60歳を超え生産年齢人口が激減する2035年問題まで一気に時代は進みます。厚生労働省から出された保健医療2035提言書での基本理念は,公平・公正(フェアネス),自律に基づく連帯,日本と世界の繁栄です。待ったなしで,改革は進みます。
近年,「歯周病が全身と関連する」という見解は,確かな情報として広がりを見せています。今後,歯周病の糖尿病,アルツハイマー病,心疾患,脳血管疾患,肺炎,関節リウマチ,腎臓病等へ及ぼす有益な情報は,日本の健康寿命の延伸に影響を与えていくことでしょう。激変する社会だからこそ,歯科衛生士も時代の変化をキャッチし,適応できる力が求められています。
さて,私たち歯科衛生士の人材確保は注目すべき社会問題です。働き方改革が進められる中,医療においても2014年の第6次医療法改正では,医療従事者の勤務環境改善に関する規定が追加されました。「医療分野の『雇用の質』向上のための勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引書」改訂版が発刊され,日本歯科衛生士会においても「歯科衛生士の人材確保・復職支援等に関する検討会」を設置,その報告書を2017年6月に提出。ガイドラインや実践書を作成し,全国展開での研修へと活動を広めています。
職場の環境改善は,社会に対応するための歯科診療所としての基盤づくりです。
健康維持管理を担う専門職である歯科衛生士自身が,考え動く時代が到来しました。
本日は,これからの時代をどのように乗り切っていくのか,歯科衛生士として一緒に考えてまいりましょう。