60th Annual Meeting in Autumn

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京都宣言

京都宣言
歯周病撲滅に向けて!

Sun. Dec 17, 2017 3:10 PM - 4:50 PM A会場 (メインホール)

進行:小方 頼昌(特定非営利活動法人 日本歯周病学会副理事長)

[KYO-1] 「京都宣言」の背景 -今,なぜ“歯周病撲滅”なのか?-

栗原 英見 (特定非営利活動法人 日本歯周病学会理事長)

研修コード:2504

日本歯周病学会が長年取組んできたPeriodontal medicine研究の成果は目覚ましく,歯周病の位置づけは,もはや単なる口腔の疾患ではなく,全身的な健康を維持・増進する上で“鍵”となる極めて重要な疾患へと大きく変化しました。この認識は歯科界に止まらず,医療関係者,マスコミなどに広く社会に受け入れられつつあります。診療報酬の面でも,“糖尿病患者の歯周治療”に特別な配慮がなされるに至っています。超高齢社会にあっては,歯周治療を医科歯科連携の元で進めていくことが当たり前になります。最新の歯科医療実態調査の結果では,8020達成者が5割を超えたものの,65歳以上の高齢者の歯周病罹患率が上昇しています。今後,医科歯科連携をさらに推進するために,歯周治療が全身の健康増進にどれだけ貢献しているのかを,実際の現場において他の医療関係者や国民に分かりやすい指標で説明する必要があります。また,医療の高度化と超高齢社会とを背景に,地域における歯周治療の充実が求められています。
大学病院勤務の日本歯周病学会会員が多く参加した治験を経て,生物学的活性分子であるFGFが歯周組織再生を目的とした世界で初めての医薬品として上市されました。医科の領域では,がん治療だけでなく,炎症性疾患,骨代謝関連疾患においても特異性の高い分子標的医療が凄まじい勢いで拡大し,歯周病患者の中にもこのような治療を受けている患者が少なくない状況になっております。まさに分子の時代の真っただ中にあります。私ども日本歯周病学会は世界の歯周病の科学を牽引する団体としてさらに研究を発展することが肝要です。
歯科の医療提供体制の特徴は,歯科治療のほとんどが小規模な診療所で提供されており,新しい概念や技術が広く正確に伝わるのに時間を要します。本学会の強みである「科学の成果」を広く正確に地域の歯周治療に反映できる体制を作り上げることが,本学会の今後の発展に繋がります。そのためには医科歯科連携をサポートする新しい歯周病の臨床指標の確立,認定医,専門医,指導医,認定衛生士の果たす役割の再評価と,それに対応した教育・研修制度の見直し,地域歯科医師会,歯科衛生士会,医師会等との一層の連携が必要です。
日本歯周病学会そして学会員を取り巻く環境はこの10年で大きく変わりました。この変化に対応するために,「歯周病撲滅」という大きな目標を掲げることで,日本歯周病学会の今後の発展に必要なことが改めて顕在化されます。医科歯科連携,高齢者歯周治療,歯周病検診,歯周病予防など,どれもこれも極めて重要な問題です。私ども日本歯周病学会だけでは,この大きな目標が達成できません。より大きな枠組みによる連携が不可欠なことは明白です。創立50周年以来の過去10年の活動を振り返り,「歯周病撲滅」という新たな目標を掲げて,70周年に向けての新たな10年に,社会環境の変化と国の大きな政策を見極めて何を目指すのか,さらに,日本歯科医師会,日本歯科医学会,日本歯科衛生士会,日本歯科商工協会などの歯科関係の諸団体のみならず,日本医師会等の関連する団体組織とどのように連携していくのかを,「京都宣言」として世に発信します。
私どもが培ってきた「科学の力」という“伝統”,そして「科学を普及させる新たな体制作り」という“革新”によって,「歯周病撲滅に向けて」新たな1歩を京都の地から共に歩み始めましょう!