60th Annual Meeting in Autumn

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ランチョンセミナー

ランチョンセミナー4

Sat. Dec 16, 2017 12:00 PM - 12:50 PM E会場 (Room B-1)

座長:村上 伸也(大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子免疫制御学講座 歯周病分子病態学)

共催:ライオン株式会社

[LS4] 歯肉上皮の細胞接着能に着目したビタミンEの炎症抑制反応

柴崎 顕一郎 (ライオン株式会社 研究開発本部オーラルケア研究所)

研修コード:2504

略歴
1984年3月 千葉大学大学院工学研究科修士課程修了
1984年4月 ライオン株式会社入社
2008年1月 ライオン株式会社研究開発本部オーラルケア研究所長
2009年1月 ライオン株式会社ヘルスケア事業本部オーラルケア事業部長
2011年1月 (公財)ライオン歯科衛生研究所(2012年6月から同財団副理事長)
2014年1月 ライオン株式会社研究開発本部オーラルケア研究所長(現在)
健康日本21に引き続き,第2次の健康日本21においても歯科分野の目標が設定されており,健康で質の高い生活を営む上で「歯・口腔の健康」が重要な役割を果たしていることが示されている。厚生労働省歯科疾患実態調査(平成28年)によると,「8020」の達成者は調査毎に増加し続けている一方で,4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合は未だ低減できていない状況となっている。歯を失う主要因である歯周病は全身疾患との関連性も示唆されており,QOLの向上のために歯周病の予防対策として歯科医師・歯科衛生士による適切な予防措置(プロフェッショナルケア)とブラッシングを中心とした的確な口腔清掃(セルフケア)を両面で実践することが必要である。これらの背景の下,我々は,セルフケア領域において歯周病の発症及び進行を予防する新たな技術及び製品の開発を進めている。
歯周病は,局所に付着し増殖した細菌が歯周組織内に侵入し,これに対する生体側の防御反応の結果,歯周組織に炎症が生じ,組織を傷害する感染性の疾患であり,歯周病を予防するためには原因となる細菌側へのアプローチと共に炎症反応の場となる生体側へのアプローチが重要である。現在セルフケアで用いられている歯周病予防製剤の多くでは,細菌側へのアプローチとして口腔内細菌の感染に対してイソプロピルメチルフェノール等の殺菌剤を用いた対処が行われている。一方,生体側へのアプローチとして,細菌の侵入に対する最前線の防御壁として機能している歯肉上皮組織のバリア機能が歯周病の発症と進行に深く関与していると我々は考え,歯肉上皮細胞を用いたバリア機能と炎症反応の関連性を検証している。歯肉上皮組織のバリア機能を構成する成分の一つである細胞接着タンパク質E-カドヘリンに着目し,病原因子LPSでの刺激を加えた際の歯肉上皮細胞中のE-カドヘリンの発現量変化と,LPSが歯肉上皮細胞層を透過する量の変化を検討した結果,LPS刺激によりE-カドヘリン発現量が低減するのに伴い,LPSの透過性が増加する負の相関が認められた。また,上皮細胞層を透過したLPSが上皮層の下で炎症反応を促進することも明らかにし,歯周病予防における歯肉上皮組織のバリア機能の重要性が示唆された。
今回の講演では,歯周病予防における歯肉上皮組織のバリア機能の役割について紹介すると共に,LPS刺激によるE-カドヘリンの発現低下を抑制する成分として,我々が見出したビタミンEの作用メカニズムの一端を解説する。また,セルフケア領域における新たな歯周病予防の取り組みとして,歯肉上皮バリア機能に着目したセルフケア製剤の開発内容についても紹介する。