60th Annual Meeting in Autumn

Presentation information

シンポジウム

シンポジウムV 口腔インプラント治療の新しい方向性

Sun. Dec 17, 2017 8:20 AM - 9:30 AM C会場 (アネックスホール)

座長:申 基喆(明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野)

[SY5-1] 歯科医科連携の共通言語は検査値

井上 孝 (東京歯科大学臨床検査病理学講座)

研修コード:2609

略歴
1978年3月 東京歯科大学卒業
1983年9月 カナダ・トロント大学歯学部客員助教授(昭和60年8月まで)
1990年3月 口腔病理専門医。指導医(第29号)
2001年5月 東京歯科大学教授(現臨床検査病理学講座)
2003年1月 日本口腔インプラント学会指導医(第5号)
2005年5月 日本口腔検査学会理事長・口腔検査認定(第1号)
2009年4月 東京歯科大学口腔科学研究センター所長
2010年6月 東京歯科大学大学院研究科長
2013年6月 東京歯科大学千葉病院病院長,同衛生士専門学校校長
2014年9月 FDI理事(アジア太平洋地域代表)
2017年4月 日本歯科医学会連合副理事長,日本歯科医学会副会長
インプラントの問題点は,1980年以来,非自己が内部環境と外部環境を貫き口腔内で機能を求められることにあることは変わりない。つまり,研究者は非自己として認識され排除されないようなインプラントを研究作製し,臨床家は,排除されない確実な適応症の選択および正確な技術および管理をする治療と言える。研究領域では,osseointegrationの改善を目的に多くの表面性状・形状,多様な処理が行われてきたが,未だに内部環境と外部環境の間にある,天然歯の付着上皮様の構造再生研究は多いとは言えない。その結果,歯周病と同じく,インプラント周囲炎は続発症の中で最も多いものに位置づけられている。臨床的にはと言えば,多くの技術革新が行われ,様々な症例に対応できるようになった。
このようなインプラント治療であるが,今後数十年は超高齢化社会に対応するインプラントの方向性を模索する必要がでてきた。つまり,基礎疾患や多くの薬の副作用,老化による機能・形態の変化,さらには病態の多様性に追随し,要介護患者への対応も重要な課題となっている。医科との連携なくして,インプラント治療が成功に導かれるか基礎と臨床で真摯に見直す必要がある。
医師は,数値化された臨床検査値により,診断し,治療そして予後判定を行う。眼科医や耳鼻科医でさえ,どの程度見えて,どの程度聞こえているか,そして治療の効果は数値で判断する。翻って,歯科医師は,いかなる時も数値を用いてこなかった。う蝕,歯周病,口内炎は視覚的に,そして咬合力は患者の主観にゆだねていたからである。医科・歯科連携が叫ばれる超高齢社会において,臨床検査値は医療従事者間での「言語」なのである。
今回のシンポジウムでは,これらの事をふまえ今後のインプラント治療の有るべき姿を述べる。