60th Annual Meeting in Autumn

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シンポジウム

シンポジウムVI 歯周組織再生治療の多様な可能性を探る!

Sun. Dec 17, 2017 9:40 AM - 12:00 PM C会場 (アネックスホール)

座長:五味 一博(鶴見大学歯学部歯周病学講座)

[SY6-4] 歯周病細胞治療における3次元培養法の現況と展望

加治屋 幹人 (広島大学大学院医歯薬保健学研究科歯周病態学研究室)

研修コード:2504

略歴
2005年 広島大学歯学部卒業
2009年 広島大学大学院歯周病態学研究室 博士課程終了 歯学博士取得
2009年 The Forsyth Institute (米国) リサーチフェロー
2012年 広島大学病院口腔維持修復歯科歯周診療科 医員
  広島大学病院口腔維持修復歯科歯周診療科 助教
2013年 日本歯周病学会 認定医
2017年 日本再生医療学会 再生医療認定医
2017年 広島大学大学院医歯薬保健学研究科歯周病態学研究室 助教
侵襲性歯周炎や重度慢性歯周炎は大規模な歯周組織破壊を引き起こす。細菌に汚染された歯は上皮で取り囲まれ異物として排除される方向にある。また,炎症後の局所は炎症性肉芽に置換され,組織を再生させるための細胞数の不足・細胞機能低下によって歯周組織の再生に至らない。このような変性性の組織破壊疾患に対しては,生体外から機能的な細胞を供給する細胞治療法が適応となる。これまでに,自己増殖能・多分化能を有する間葉系幹細胞(MSCs)を人工足場材料と混和して移植する臨床研究が施行されてきた。しかしながら,その安全性・有効性が報告されつつあるが,未だ完全な歯周組織再生は達成出来ていない。
その原因の一つとして細胞を移植するための人工足場材料の性質が挙げられる。この人工足場材料が具備すべき要件として,十分な数の細胞との複合体が容易に作成でき,その細胞性質に悪影響を与えず,移植後は生体内で適切な代謝を受けられる必要がある。これらの要素を満たす人工足場材料開発研究が進められているが,これまでのところ,理想的な材料は見つかっていない。
そこで,近年,人工足場材料を必要とせずに細胞移植が可能な3次元培養法の研究が行われている。代表的なものとして,温度応答性培養皿を利用して得られる細胞シートや高密度・浮遊状態培養で得られる細胞スフェロイドがある。これらの3次元培養法は,in vitroで立体的な組織様構造を作成したのちに,組織欠損部へ細胞を直接移植できるため,新しい細胞治療法として大きな期待を集めている。
私どもの研究室では,3次元培養法として,MSCsとその細胞自身が産生する細胞外基質(ECM)を利用して,間葉系幹細胞集塊Clumps of MSC/ECM complex(C-MSC)を樹立した。C-MSCは直径1mmほどの立体的細胞集塊であり,人工足場材料を用いずに欠損部に直接移植できる。さらに,これを複数個組み合わせることで,複雑で大規模な組織欠損に対しても適合できる。また,球状細胞集塊のまま培養できるため,in vitroにおいて細胞機能を調節した後に直接移植を行う事が可能である。これまでに,石灰化能を高めたC-MSCは効率的に骨・歯周組織再生を促進することや,免疫制御能を高めたC-MSCは他家移植に伴う移植拒絶を抑制できる可能性を示してきた。さらに,C-MSCは凍結保存後もその3次元的構造と細胞機能を維持し組織再生を促進することを見出している。
C-MSCは歯周組織再生細胞療法に有効と考えられることから,さらに臨床応用を進めるためには,その細胞の性質を詳細に理解する必要がある。C-MSC中の細胞は,従来の培養皿で飼われる二次元培養とは異なり,浮遊状態で立体的なECMの環境のなかに存在することから,C-MSC内の三次元培養によって生じるメカノトランスダクション機構とその細胞性質への影響について検討を行っている。本発表では,この三次元培養によって生じるメカノトランスダクションについて報告するとともに,それらの結果から予想される将来の三次元培養を用いた新しい細胞治療法について討論したい。