60th Annual Meeting in Autumn

Presentation information

シンポジウム

シンポジウムVI 歯周組織再生治療の多様な可能性を探る!

Sun. Dec 17, 2017 9:40 AM - 12:00 PM C会場 (アネックスホール)

座長:五味 一博(鶴見大学歯学部歯周病学講座)

[SY6-5] レーザーと歯周組織再生

青木 章 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野)

研修コード:2504

略歴
1989年 東京医科歯科大学歯学部卒業
1989年 東京医科歯科大学歯学部歯科保存学第二講座 研修医・医員
1996年 東京医科歯科大学歯学部歯科保存学第二講座リサーチ・アソシエイト
  (日本学術振興会研究員)
1998年 東京医科歯科大学歯学部歯科保存学第二講座 助手
2003~04年 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校Visiting Assistant Professor(文部科学省在外研究員)
2007年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野 助教
2011年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野 講師
2017年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野 准教授
歯周治療・インプラント周囲治療においては広義の光治療(phototherapy)として様々なレーザー/LEDが応用されている。レーザーの優れた組織蒸散・殺菌・組織刺激効果により,従来の機械的治療(mechanical therapy)に複合的に応用され,一部の重度歯周炎における化学療法の応用とともに,歯周治療の治療様式は,機械-化学-光療法(mechano-chemo-phototherapy)の段階へと発展しつつある。
今日,レーザーはその優れた物理的・生物学的効果により,再生治療においても果たす役割があると思われ,その応用は大きく分けて二つあると考えられる。一つは再生外科治療の際に,物理的な蒸散効果を利用した局所のデブライドメントの効果的ツールとしての応用,もう一つは,レーザーの生物学的効果,すなわち細胞/組織活性化効果(Photobiomodulation)の直接あるいは間接的応用である。
デブライドメントのツールとしての応用に関しては,私達はEr:YAGレーザーを用いた歯周外科治療,歯周基本治療を行っており,良好な成績を得ている。とくに,レーザーによるデブライドメントでは,感染組織の優れた蒸散だけでなく,同時に局所の殺菌・無毒化と周囲への低出力レーザーの波及による組織活性化効果が発揮されるため,組織再生にさらに効果的に働くことが期待される。動物実験では,歯周外科時のEr:YAGレーザーによる肉芽組織のデブライドメントにより,有意に高い骨再生を報告している(Mizutani, LSM 2006)。臨床では,Er:YAGレーザーを応用したフラップ手術において,より良好な治癒を確認し,エムドゲイン®を応用した再生治療でも,高出力と低出力のEr:YAGレーザーを効果的に応用し顕著な骨再生を得ている(Taniguchi, PRD 2016)。
さらに,私達は,非外科的治療においても,Er:YAGレーザーを従来のSRPに複合的に応用した包括的歯周ポケット治療(Aoki, Periodontol 2000 2015)について検討している。この方法では,ポケット内部の根面および歯肉側壁の徹底的なデブライドメントに加え,歯周組織修復時に骨髄由来細胞が動員されるというKimuraらの報告(Kimura, Front Cell Dev Biol 2014)に基づき,歯周組織欠損部への骨髄由来細胞の誘導を目的として骨欠損のデブライドメントにより骨髄からの出血を促し,同時にレーザー照射による周囲組織への刺激効果を期待するものである。それにより,従来のポケット治療より良好な治癒が得られるだけでなく,さらには歯槽骨の良好な再生も確認されている。術式としては,従来の非外科的ポケット治療というよりも,flapless surgeryとなっている。
一方,レーザー/LEDの有する生物学的効果については多数の報告があり,私達も,Er:YAGレーザーや半導体レーザーによる各種細胞の増殖促進作用,半導体レーザーによる石灰化促進作用などについて基礎的な報告をしている。臨床応用としては,低出力レーザーを術中術後に数回照射し,組織の再生を高める効果が期待されている。また,レーザー/LEDの有する生物学的効果を応用し,細胞治療において移植細胞の術前照射により細胞をさらに活性化する方法も考えられる。
今後,光エネルギーの持つ炎症抑制,創傷治癒および組織再生促進などの様々な生物学的効果がさらに解明されるに従い,新しい治療コンセプトに基づいた効果的な臨床応用が益々増加するものと思われる。このように,組織再生においても各種の光エネルギーを応用した歯周・インプラント周囲光治療(Periodontal/peri-implant phototherapy)の役割が増大するであろう。