60th Annual Meeting in Autumn

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Sunstar Young Investigator Award口演

Sunstar Young Investigator Award口演

Sat. Dec 16, 2017 11:50 AM - 12:50 PM A会場 (メインホール)

座長:高柴 正悟(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野)

[SYIA-03] 蛍光/ラマン強度比を用いた歯石の有無の評価

中村 紫野 (昭和大学歯学部歯周病学講座)

研修コード:3101

Keywords:歯周炎、歯石、セメント質、象牙質、ラマン分光法

【目的】歯石除去の正確な評価は歯周治療の予後を左右する重要なポイントである。しかし,歯周基本治療中には歯肉縁下歯石を直視できず,術者の手指の感覚に頼ることが多い。これまでに,内視鏡型の歯石検出機器(Perioscopy Inc., Oakland, CA, USA)や,蛍光測定による歯石沈着量測定機器(DiagnodentTM Pen, KaVo, Biberach, Germany)が開発されてきた。しかし,主観的判断が存在することや,照射条件により術者間で判断や数値が異なることがある。本研究では,レーザー照射角度や照射距離による蛍光集光効率の変動を最小限にするために,ハイドロキシアパタイト(HA)のラマンバンド強度で規格化した蛍光強度,つまり蛍光/ラマン強度比を算出することにより歯石の有無の評価が可能かどうか検証を行った。
【材料と方法】本研究では歯根面に歯石が沈着した32本の抜去歯を使用した(昭和大学歯学部 医の倫理委員会 承認番号2013-002)。測定はポータブルラマン分光光度計(ProRaman-L, Enwave Optronics, Inc)を用い,測定条件は励起波長785nm,出力100mW,露光時間10秒,露光回数10回とした。規格化にはHAの960cm-1のラマンバンド強度を利用し,ラマンスペクトルのフィッティング結果より蛍光/ラマン強度比を算出した。7本の抜去歯では,歯石沈着部位,部分的にスケーリングルートプレーニングを行いセメント質を露出された部位,歯質を削合し象牙質を露出させた部位の3つの異なる歯根面が存在する厚み1mmのスライスを作成し,蛍光/ラマン強度比の比較を行った。統計解析はWilcoxon rank sum testを用いた。25本の抜去歯では,スケーリング3ストロークごとに同部位を測定し,蛍光/ラマン強度比の変化を観察した。
【結果】セメント質および象牙質のラマンスペクトルはHAのラマンバンドである440,580,960cm-1と有機質のラマンバンド2940cm-1が確認できた。一方,歯石沈着部位では強い蛍光強度によってラマンバンドは検出されなかった。次に,歯根面の同部位をレーザー照射距離1mmから5mm,照射角度を45度から135度まで変化させて規格化前後で比較したところ,規格化前の蛍光/ラマン強度比と比較して規格化後では一定値を示したため,本法を用いると照射条件により数値が変動しにくいことを示した。そして,7本の抜去歯で歯石沈着部位,セメント質,象牙質の蛍光/ラマン強度比を比較した。歯石沈着部位とセメント質,歯石沈着部位と象牙質には有意差が認められたが,象牙質とセメント質には有意差は認められなかった。最後に,歯根面の歯石沈着部位におけるスケーリング3ストロークごとの蛍光/ラマン強度比の変化を25本の抜去歯で測定した。25本中24本で,蛍光/ラマン強度比は測定ごとに減少した。更に,各測定値の差を算出すると,どの歯も0に漸近することが示された。
【結論】蛍光/ラマン強度比の変化が0に近似するときセメント質または象牙質が露出しており,歯石が除去された状態であることが示された。