*木下 富美子1 (1. 秋田県立循環器・脳脊髄センター)
セッション情報
公募シンポジウム
シンポジウム9:認知症予防の現在と未来
2024年10月29日(火) 13:10 〜 14:45 第5会場 (札幌コンベンションセンター 107-108)
座長:後藤 温(横浜市立大学 医学部)、森田 明美(鳥取大学 医学部)
WHOファクトシートによると、世界では5,500万人を超える認知症患者がおり、毎年1,000万件の新規症例が発生する。日本でも、2022-2023年の調査における認知症の有病率は12.3%であり、2025年の認知症患者数は約470万人と推計されている。現在、我が国においては、「共生」と「予防」を軸とした認知症対策が計られており、本年1月には、認知症基本法も施行された。
医療に目を向けると、昨年末、アルツハイマー病の新薬として、レカネマブが日本国内で承認され、話題となった。認知症、特にアルツハイマー病にはこれまでコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体阻害薬などの薬剤が使われてきたが、いずれも、症状を一時的に和らげることを目的とする対症療法の範疇であった。それに対し、レカネマブなどの新しい抗体医薬はアミロイドβと結合して除去するという、アルツハイマー病の原因に働きかけて進行を抑える薬であり、疾患修飾薬と呼ばれる。ただし、レカネマブなども発症後の根本的な治療薬というわけではなく、効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」に限定されている。レカネマブの保険適用は、大きな期待をもって開始されたが、患者1人あたり年間およそ298万円という薬価や、投与対象者・投与施設などに詳細な条件が示されたことで、実際に治療を受けるためのハードルは高いと言われているが、その一方で、既にレカネマブは5億円以上の医療機関への納入実績があり、治療導入は順調に拡大しているとの報告もある。
こうした現状を踏まえて、本シンポジウムでは、「診断と検査」「地域での予防」「医療経済」をキーワードとして、3人のシンポジストの先生方にお話しいただき、ディスカッションを通して、認知症に対する、医療、予防そして共生を目指す施策の現状と未来を考えたい。
*天野 宏紀1、増本 年男1、森田 明美1 (1. 鳥取大学 医学部 社会医学講座 健康政策医学分野)
*五十嵐 中1 (1. 東京大学 大学院薬学系研究科・薬学部)