The 83rd Annual Meeting of Japanese Society of Public Health

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Public Symposium

高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施-効果的で効率的な実装をめざして

Wed. Oct 30, 2024 3:25 PM - 5:00 PM Venue4 (Mid-sized Hall, Sapporo Convention Center)

Chair:Nobufumi Yasuda, Emiko Kishi

高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施(以下、一体的実施)は、地域保健行政での疾病予防と重症化予防に係わる事業、国民健康保険の特定健康診査、後期高齢者医療制度の高齢者の健康診査、そして介護保険行政での介護予防事業が、実施主体の間での連携と情報共有が不十分なまま行われていることの克服をねらった施策といえる。縦割りの活動の狭間にある人たちを含めてひとり一人に、疾病予防と重症化予防、フレイル予防と生活機能の改善を一体として提供することをめざしている。配置される専従の医療専門職がコーディネーターとなり、KDBシステムによって個人レベルでのリンケージが可能になった健康診査所見、医療給付データ、フレイルチェック所見、そして介護給付データを参照して、介入を必要とする人を予防、医療、介護の垣根を超えて把握する。そして、保健事業、介護予防事業、その他のフォーマルサポート、そしてインフォーマルサポートをベストミックスした介入を処方する。KDBシステムを用いて、個人レベルでの介入の効果検証と併せて、集団レベルでの一体的実施の効果検証も行える。
一体的実施は後期高齢者医療広域連合が実施主体で、市町村へ委託して行われている。令和2年度に開始され、令和6年度には約96%の市町村で開始される見通しで、地域への導入期は終わった。今後は地域での実装期へと進み、効果的かつ効率的に進める工夫を施す段階である。厚労省作成資料によれば、市町村は、一体的実施に取り組む上での課題として、医療専門職の確保、関係部署間の連携、KDBの機能を理解しての活用、継続して実施することへの支援などを挙げている。市町村がこれらの課題に対処する上での好事例を共有し、好事例に共通する特徴を踏まえて自らの取り組みに工夫を施すこと、そして市町村の取り組みを後方支援するしくみを整えることが、実装を促すと期待される。
本シンポジウムでは、厚労省の担当者が一体的実施のねらいとめざす成果について概説し、また、研究者が一体的実施の有効性に係わる科学的根拠を整理する。その後、好事例として、中核市での取り組み、そしてより小規模の自治体での取り組みを紹介する。総合討論では、一体的実施を効果的かつ効率的に地域へ実装する上での留意点、そして好事例に共通する特徴を横展開するための課題と対応策を探りたい。