*寺澤 晃彦1 (1. 藤田医科大学医学部救急医学・総合内科学講座)
セッション情報
公募シンポジウム
シンポジウム38:科学根拠に基づく大腸がん検診の効率的運用
2024年10月30日(水) 10:45 〜 12:20 第7会場 (札幌コンベンションセンター 204)
座長:濱島 ちさと(帝京大学)、中山 富雄(国立がん研究センター)
わが国では、1992年から免疫学的便潜血検査による大腸がん検診が行われているが、大腸がん死亡率は近年ほぼ横ばいで推移している。所定の効果が得られない原因としては受診率が地域・職域あわせても50%弱に留まっているだけでなく、精検受診率が60%未満と他のがん検診に比べて低いことが影響している。がん対策基本計画では当初からがん検診受診率が目標に掲げられてきたが、第3期計画からは精検受診率向上も加えられた。
免疫法の導入は、諸外国に先んじたが、実施方法は導入時から30年間ほとんど変わっていない。一方、諸外国では便潜血検査化学法から免疫法へと主たる検診方法は変化しており、その根拠となる研究も数多く公表されている。大腸がん検診における受診率、精検受診率が先行する乳がん検診などに比べて低いことは諸外国でも問題視されており、その改善策が検討されている。大腸がん検診の受診率・精検受診率の改善には、便潜血検査の特性を活かし、受診の利便性に配慮した方法が検討されるべきである。
便潜血検査による死亡率減少効果を確実にするには、科学的根拠に基づく運用方法の改善が必要である。このため、検体数(精度)、カットオフ値(精度)、郵送法(受診率)の科学的根拠を検証すると共に、以下の問題点について検討する。①検診対象年齢:高齢者の1次検診の増加は精検の増加を誘発する。限られた資源である大腸内視鏡を効率的に活用するためにも対象集約が必要である。②カットオフ値:免疫法はカットオフ値の設定により、精検対象者をコントロールできる。地域の医療資源や性差などを勘案した再検討が求められる。③受診から精検・治療に至るまでの一貫した受診者支援:諸外国では受診者・精検受診者への相談やShared Decision Makingの推進、予約支援などを行うナースナビゲーションが受診率や精検受診率向上に寄与している。これらの対策を地域に実情を勘案したうえで包括的に行うことにより効果が期待される。本シンポジウムでは、科学的根拠に基づく大腸がん検診ガイドラインのエビデンスレポートの成果を踏まえ、地域における経験事例をもとに、便潜血検査による大腸がん検診の効率的運用について議論する。
*細野 覚代1、濱島 ちさと2、中山 富雄1 (1. 国立がん研究センターがん対策研究所、2. 帝京大学)
*齋藤 洋子1,2,3、石田 理2、神長 憲宏2 (1. 茨城県メデイカルセンター、2. 水戸市医師会、3. 茨城県生活習慣病検診管理指導協議会大腸がん部会)
*山崎 恭子1、石田 理3、齋藤 洋子2、濱島 ちさと1 (1. 帝京大学、2. 茨城県メデイカルセンター、3. 水戸市医師会)