*宮崎 信恵1 (1. ピース・クリエイト有限会社)
セッション情報
公募シンポジウム
シンポジウム51:映画「終わりの見えない闘い」とパンデミックの記録を残すこと―新型コロナウイルス感染症アーカイブズの構築をめぐって
2024年10月31日(木) 09:00 〜 10:35 第6会場 (札幌コンベンションセンター 小ホール)
座長:城所 敏英(公衆衛生保健所活動研究会、モニタリング委員会感染症等グループ)、飯島 渉(長崎大学熱帯医学研究所)
いまだ終息したとは言い難いCOVID-19パンデミックであるが、その資料、記録、記憶の保全と継承は、次の感染症への備えとして重要である。
COVID-19発生初期の保健所対応を記録した映画「終わりの見えない闘い」は、保健所内部の映像記録として稀少・貴重なものである。
この記録をきっかけとして、アーカイブズの構築について考えたい。
アーカイブズ(Archives)とは、さまざまな資料、記録を残すこと、残されたもののまとまりを意味する。その機能を担う機関は、国や地方公共団体が設立した公文書館や企業や団体が設立する文書館である。
COVID-19のパンデミック対策の最前線に位置した保健所は、この間、膨大な資料、記録を蓄積してきた。その中には、疫学的な情報と同時に、手書きのメモ、住民からの苦情の聴き取りなどもある。それは、対策をめぐる現実をもっともよく示すものであり、次のパンデミックへの対策を成熟したものとし、影響を緩和するための現場の知恵が含まれている。しかし、こうした資料や記録は、はたして保存・継承されるであろうか。
保健所の資料、記録は保存年限が過ぎると廃棄される制度となっている。また、保健所を管轄している地方公共団体には公文書を保存、継承するしくみがないところも少なくない。いま、何もしなければ、あれほど大きな事件だったCOVID-19をめぐる保健所の資料や記録も後世に残される可能性は小さい。「何を、誰が、どう残すか」を考えながら、意図的に資料、記録を残すことが必要なのである。
本シンポジウムでは、ドキュメンタリー映画の製作者、本庁での取り組みを出版した職員、保健所で取り組んできた保健所長たち、4名のシンポジストから保健所での取り組みの記録を残すことについて報告していただく。
後半の討論で、アーカイブズについて意見交換をおこない、シンポジウム参加者とその意義と課題を共有したい。このシンポジウムが、アーカイブズについて、今後の公衆衛生学会の取り組みへつながるヒントになることを期待する。
*関 なおみ1 (1. 国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター(元 大田区保健所 感染症対策課))
*山口 亮1 (1. 札幌市保健所)
*横山 勝教1 (1. 香川県中讃保健所)