第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

委員会シンポジウム

委員会シンポジウム24
旧優生保護法における精神科医の果たした役割についての学際的検討

2023年6月23日(金) 13:15 〜 15:15 I会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G318+G319)

司会:竹島 正(川崎市健康福祉局総合リハビリテーション推進センター), 三野 進(みのクリニック)
メインコーディネーター:竹島 正(川崎市健康福祉局総合リハビリテーション推進センター)
サブコーディネーター:三野 進(みのクリニック)

委員会:法委員会

本シンポジウムは、法委員会の取り組んでいる旧優生保護法における精神科医の果たした役割についての学際的検討を踏まえたものである。これまでの研究から、優生保護法による優生手術の申請者の多くは精神科医であったこと、優生保護審査会においても精神科医は大きな役割を果たしてきたことが明らかになっている。一方で、旧優生保護法が母体保護法に改正されてから四半世紀以上が経過し、当時の精神科医の関与の具体的な事実については不明な点が多い。法委員会においては、精神科医療・精神科医の果たした役割について、社会学、歴史学の研究者を含む学際的な研究体制のもとで実証研究に取り組んできた。その研究成果は本学会の学術総会において報告してきたところである。本シンポジウムでは、これまでの研究を踏まえて、精神科医の関与がどのような文脈のもとでどのような内容で行われたか、実証的に検討する。本シンポジウムの導入として、はじめに座長から旧優生保護法、法委員会で本研究に取り組むことになった経緯、これまでの研究の全体像を簡潔に説明する。そのうえで各シンポジストが研究報告を行う。後藤基行(立命館大学)は、神奈川県立公文書館の資料等をもとに、精神科医の果たしてきた役割に関する実証研究の成果を報告する。またわが国の医療アーカイブの現状と課題について述べる。中村江里(広島大学)は、過去の優生手術の実態について明らかにするために診療録を一次資料として行われてきた海外の歴史研究を整理した上で、過去の診療録に記録された優生手術に関わる記載を簡易に同定する方法論について検討し、報告する。三野進(みのクリニック)は、旧優生保護法の法第4条(強制優生手術)の運用実態に都道府県による差があることを踏まえ、第4条該当の多かった北海道について、当時の行政、精神科医の果たした役割について収集した資料をもとに報告する。利光恵子(立命館大学)は、地方自治体が保有する優生保護法関連公文書の調査・検証から得た知見を報告する。また、市民団体の一員として、障害を理由とする強制不妊手術の実態解明を求めてきた立場から、法委員会の研究についてのコメントを述べる。優生学とそれに基づく優生政策は、当時、国際的にも、学術と政策の両面で主流であった。また日本は第二次世界大戦後の混乱の中にあり、人口問題は大きな課題であった。その中で旧優生保護法が成立し、それのもとに精神科医の関与が発生していた。時代背景は異なるとしても、このような事態はいつでも発生しうるものであり、現在及び将来の課題としても捉える必要がある。4人の発表の後、実証研究の成果、現在と将来への警鐘、社会課題への学際的研究の必要性、精神医療における倫理の問題等について話し合うこととしたい。