第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

委員会シンポジウム

委員会シンポジウム28
精神科医の偏在対策は必要か?:現状と将来への影響

2023年6月23日(金) 15:30 〜 17:30 N会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G412+G413)

司会:吉村 健佑(千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センター), 宋 龍平(岡山県精神科医療センター)
メインコーディネーター:宋 龍平(岡山県精神科医療センター)
サブコーディネーター:根本 康(さいたま市立病院精神科)

委員会:精神科医・精神科医療の実態把握・将来計画に関する委員会

本委員会は『精神科医の数・地理的分布と勤務状況に関する実態調査』を通して精神科医師数は全体で増加しつつあるものの、諸外国の平均値・中央値には届いていないことを第118回日本精神神経学会学術総会(2022年)にて報告した。また地域、所属施設の属性(総合病院、精神科病院、診療所など)、サブスペシャリティ(児童・思春期精神医学、総合病院精神医学、司法精神医学など)ごとで見ると、精神科医の数において大きなばらつきがみられた。

これを踏まえて「精神科医は充足しているのか、不足しているのか?」という問いに対して回答することは非常に難しい。それはどのような立場で回答するかによって回答は変化しうるもので、統一した見解の醸成は簡単ではない。そして精神科医の配置が適正に行われていないことを示唆しているのかもしれない。

2020年に始まる新型コロナウイルス感染症の流行は社会に様々な影響を及ぼし、それは医療においても例外ではなく、医療従事者や資材などの医療資源が有限であることが一層明確となった。また厚生労働省が主導する働き方改革においては、特に医師は時間外労働を上限が設定されるほか、連続勤務時間制限や勤務間インターバル等の健康確保措置の実施などが求められるようになった。これは精神科医療の中でも特に精神科救急の領域に影響が出ることが危惧される。新型コロナウイルス感染症の流行や働き方改革によって、精神科医の偏在が進めば、精神科医療システムが不安定となりうる。

このような状況下で持続可能な精神科医療の将来計画を考える際に、個々の医師の自由選択ではなく、戦略的な人材育成・配置を行う方策も検討しなくてはならない。そこで本シンポジウムでは「精神科医の偏在対策は必要か?:現状と将来への影響」と題し、5人の演者に発表していただくこととした。まず専門医制度・シーリングの視点から医師偏在対策の現状とその対応策の整理を行う。そして働き方改革が精神科医の勤務や診療にどのように影響を与えるのか、また働き方改革は精神科救急にどのような影響が出るのか、について発表していただく。また需要に対して供給が不足する領域、特に身体合併症医療では医療連携が重要であるが、精神科病院と総合病院との連携と有床総合病院における院内連携について発表していただく。これらの発表を通して精神科医の偏在問題の現状を改めて把握し、政策的な意図を読み解き、明らかとなっているエビデンスを確認しつつ、本学会が目指すべき方向性について、当日活発に議論することにしたい。