○山下 裕史朗 (久留米大学医学部・小児科学講座)
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委員会シンポジウム
委員会シンポジウム29
ADHD治療薬の課題と展望
Sat. Jun 24, 2023 8:30 AM - 10:30 AM A会場 (パシフィコ横浜ノース 1F G7+G8)
司会:齊藤 卓弥(北海道大学病院児童思春期精神医学研究部門), 安田 由華(医療法人フォスター生きる育む輝くメンタルクリニックNeo梅田茶屋町)
メインコーディネーター:齊藤 卓弥(北海道大学病院児童思春期精神医学研究部門)
サブコーディネーター:安田 由華(医療法人フォスター生きる育む輝くメンタルクリニックNeo梅田茶屋町)
委員会:薬事委員会
注意欠如多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)は、不注意・多動衝動性を特徴とする神経発達症である。病態として、脳の構造的変化を伴う成熟遅延が指摘されており、実行機能障害を中心とする機能障害を引き起こす。有病率は、小児および青年で約5%、成人で約2.5%であり、近年では小児期にとどまらず、成人期の疾患としても認知されてきている。これに伴い、ADHDの診断がなされる機会が増加し、同時に薬物治療に導入されるケースも増加してきている。ADHD治療薬としては、メチルフェニデートやd-アンフェタミンなどの精神刺激薬と、ノルピネフリンおよびドーパミンを介した認知増強効果を伴うアトモキセチンなどの非刺激薬が主に用いられる。ただし、これらの薬剤の作用機序は解明されておらず、乱用や依存のリスクがあるとともに、うつ、不安感、幻覚などの精神症状を引き起こす可能性があることが知られている。海外では健常者によるオンライン購入や処方薬の横流しなどによるこれら薬剤の流通が問題となっており、ADHD治療薬の使用には特に慎重な対応が必要である。以上の状況を踏まえ、国内では精神刺激薬であるメチルフェニデート塩酸塩(コンサータ)とリスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ)の2剤について、ADHD適正流通管理システムにより流通管理規制が行われている。しかしながら、こうした厳密な流通管理の一方で、臨床現場における急速なADHDの認知とそれに伴う薬物療法の普及には負の側面があり、適格な診断に基づいていないケースや、処方が適切におこなわれていないケースの存在が懸念されている。そこで薬事委員会ではこれらのADHD治療薬における臨床的諸問題の解決のため、適切なADHDの診断に基づく薬物療法の導入、及びADHD治療薬の流通管理に関する現在の課題と今後の展望について検討したい。本シンポジウムにおいては、会員がADHDの小児と成人について適切な診断ができるよう診断のポイントを明確化すべく2名のスピーカーを招いた。これを踏まえて、臨床現場で生じているADHD治療薬の適正使用と流通管理に関する問題提起を行う。最後に、諸外国のADHD治療薬の流通や規制の在り方を紹介し、本邦におけるADHD治療薬の流通規制を含む適正使用の課題と期待される展望についての立場を含めたディスカッションを行いたい。向精神薬の使用には、利点とリスクの両方があるが、特に精神活性物質の効果的な管理は、今後ますます重要な問題になるであろう。ADHD治療薬を、如何に安全かつ実践的に使用していくべきかを検討し、今後のハイリスク薬のより良い治療導入と流通管理を促進することを本シンポジウムの目標とする。
○岩波 明, 中村 暖, 林 若穂, 鈴木 洋久 (昭和大学医学部精神医学講座)
○安田 由華1,2 (1.医療法人フォスター生きる育む輝くメンタルクリニックNeo梅田茶屋町, 2.国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神疾患病態研究部)
○齊藤 卓弥 (北海道大学病院児童思春期精神医学研究部門)
○竹内 大輔 (厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)