第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

委員会シンポジウム

委員会シンポジウム32
〔日本精神神経学会倫理教育研修会対象セッション〕当事者参加型の倫理委員会の意義と可能性:ゲノム研究を例にとって

2023年6月24日(土) 10:45 〜 12:45 B会場 (パシフィコ横浜ノース 1F G5)

司会:夏苅 郁子(やきつべの径診療所精神科), 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神疾患病態解明学)
メインコーディネーター:夏苅 郁子(やきつべの径診療所精神科)
サブコーディネーター:尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神疾患病態解明学)

委員会:倫理委員会

2021年に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」が統合され、新指針が施行された。ゲノム研究の進歩は目覚ましく、ガン領域を中心により有効な治療法の選択や新型出生前診断(NIPT)や着床前遺伝学的検査(PGT-M)など、研究場面のみならず一般市民生活においてもゲノムは身近な話題となりつつある。新指針はその反映でもあるが、我が国は例えばNIPTやPGT-Mの取り扱いに関する国としてのガバナンスが乏しいため、十分な遺伝カウンセリングが為されないまま実施する医療機関の存在などが懸念されている。
倫理委員会では指針の大きな変化に対して、第117回の本学会委員会シンポジウムで「倫理指針改正による多施設研究と試料・情報利用研究へのインパクト」、第118回は「当事者参加型の倫理審査委員会の意義と可能性」というテーマでシンポジウムを行った。今後ますます多様化、巨大化する医学研究、特にゲノム研究においてはこれまでにない喫緊の問題が多々あり、これらは専門家や研究者だけで論じることはできない。研究倫理をどのように考えるか、当事者・家族の意見は必須である。一方で、精神科領域では倫理委員会委員を一般の立場の方が務めることはあったが、当事者・家族の立場の委員はいなかった。倫理委員会では本年6月に家族会会員による本委員会の見学を実施、実際の委員会審議の流れを体験していただいた。
今回はこれまでの活動を元に、当事者参加型の倫理委員会の実現には具体的にどのような問題があるのか、その対策として何が考えられるのか、改めて当事者参加型の倫理委員会の意義を再考する。発表者にはがん医療の当事者、倫理委員会を見学した家族会代表、精神疾患の当事者、臨床遺伝専門医・研究者、遺伝カウンセラーが登壇する。それぞれの立場から、ゲノム医療における研究倫理、当事者参加型の倫理委員会の在り方について意見交換とディスカッションを行う。本シンポジウムが、今後の精神医学研究への患者・市民参画への足掛かりの一つとなることを期待したい。