第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

委員会シンポジウム

委員会シンポジウム37
精神保健福祉法改正 -それぞれの立場で考える精神保健福祉法のあるべき姿-

2023年6月24日(土) 13:15 〜 15:15 G会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G314+G315)

司会:太田 順一郎(岡山市こころの健康センター), 佐竹 直子(国立国際医療研究センター国府台病院精神科)
メインコーディネーター:佐竹 直子(国立国際医療研究センター国府台病院精神科)
サブコーディネーター:太田 順一郎(岡山市こころの健康センター)

委員会:精神保健福祉法委員会
オンデマンド配信対象外

 精神保健福祉法は、平成29年に改正案が廃案になって以来約5年間法改正に向けた動きがないまま、その間措置入院制度の見直しや指定医制度など法改正により新しい運用が予定されていた事案が通知レベルで新しい運用がなされてきた。令和3年10月から開催された「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」の最終報告書(令和4年6月)では、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を中心に、「精神保健に関する市町村等における相談支援体制」「精神科病院に入院する患者への訪問相談」「医療保護入院の必要最小化」「家族等同意の見直し」「精神医療審査会の機能向上」「患者の意思に基づいた退院支援」「不適切な隔離・身体的拘束をゼロにする取り組み」「精神科医療聞ける虐待の防止」など精神保健福祉法の改正が必要な様々な課題が示された。これを受け、令和4年10月政府は様々な障害者支援に関連した「障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。その中に、「精神障害者の希望やニーズに応じた支援体制の整備」として、家族等の同意によらない市町村長同意の医療保護入院を可能にする、医療保護入院の入院期間を定め、一定期間ごとの入院要件の確認、医療保護入院者に対する「入院者訪問支援事業」の創設、精神科病院での虐待防止対策などについての精神保健福祉法改正案が盛り込まれている。日本精神神経学会精神保健福祉法委員会(以下当委員会)は、これまで精神保健福祉法の改正にタイミングに合わせて、現行法の問題点を指摘しあるべき姿を提言してきた。今回も検討会終了後に法改正が行われる可能性が高いと判断し、同年9月28日「精神保健福祉法改正に関する学会見解」を提示した。それには「法体系自体の見直し」「自発的入院制度の抜本的な見直し」「入院患者の退院促進および権利擁護の抜本的な見直し」「適正な精神科医療・保健・福祉の確保」の必要性が明記されており、今回の改正法案のような一部改正とは一線を画した形になっている。
 本シンポジウム開催まで法改正に関する動向は未知数であるが、改正の有無にかかわらず当事者、家族、法律家などの発表を踏まえて、今回の改正案を踏まえて精神保健福祉法のありかたについて考えたい。