○大澤 亮太 (元住吉こころみクリニック)
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オンデマンド配信限定セッション
オンデマンド配信限定セッション1
患者にとっての医療の質の向上を目指したTMS療法リアルワールドリサーチ:TMSの適切な普及と拡大に向けて
司会:野田 賀大(慶應義塾大学医学部・精神・神経科学教室), 大澤 亮太(元住吉こころみクリニック)
メインコーディネーター:野田 賀大(慶應義塾大学医学部・精神・神経科学教室)
欧米では治療抵抗性うつ病をはじめとした一部の精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation: TMS)療法が通常の治療オプションとして提供されているが、本邦では2019年に漸く薬物治療抵抗性うつ病に対するNeuroStar TMS治療装置を用いたTMS療法が一定の条件下で保険収載されるに至った。現在、大学病院をはじめとした一部の施設において同治療が保険診療下で実施されているが、実施者基準や保険点数の兼ね合いから本来TMS療法を受けるべき患者に十分なTMS療法が行き届いていないという本邦に特有の由々しき問題がある。そのため、必然的な帰結として、本来の保険診療からどうしても炙れ出てしまう不幸な患者がいるというのも事実である。そのような状況において、本邦でTMS療法を何とか実施するための方策は、特定臨床研究として徹底した管理の下、研究として実施するか、あるいは患者との個人契約の枠組みで自由診療として実施するかの二択しか残されていない。ただし、前者の特定臨床研究に関しては、同治療を「研究」の一環として提供することができたとしても、それを具現化するまでにかかる時間と費用と労力が甚大であるというまた別の問題も存在する。つまり、純然たる研究だけでは、日常臨床において切実な問題を抱えて目の前に突如現れた患者に適切に対処することができないという大きな限界があり、臨床医としては非常に歯痒い思いをする。すると、最終的にはプロフェッショナルとしての倫理観を保った上で専門家としてできることを自由診療として実施せざるを得ないという場面にも遭遇し得る。そのような現実問題を可能な限り解消し、医療者及び患者の双方にとって互恵的な医療実践を具現化するためのプラットフォームとして、2021年に臨床TMS研究会が母体となり、TMS療法関連データベース・レジストリ研究プロジェクトを立ち上げた。同プラットフォームを活用することで、全体として共通の倫理基盤を共有しつつ、各医療機関において独自に実践しているTMS療法に関する診療データを全国共通のTMSレジストリに登録することができ、それらのデータを二次的に利活用することで、TMS臨床の発展に向けたリアルワールド研究が実装できる仕組みになっている。今回はこのようなシステムを用いて、各施設で独自に収集しているTMS療法関連データを①気分障害、②強迫性障害、③睡眠障害、④コロナ後遺症メンタルヘルス障害の側面からフィーチャーし、本邦におけるTMS療法の実践に関する最新の現況を報告したい。
○井川 春樹 (武蔵小杉こころみクリニック心療内科)
○和田 真孝 (慶應義塾大学病院)
○野田 賀大 (慶應義塾大学医学部・精神・神経科学教室)