○上島 雅彦 (竹田綜合病院精神科)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム102
精神科アウトリーチはいつ誰に必要なのか?-対象と実施主体別にみた支援の実際と仕組みづくり-
2023年6月24日(土) 13:15 〜 15:15 F会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G312+G313)
司会:西尾 雅明(東北福祉大学総合福祉学部総合福祉学部), 渡邉 真里子(ちはやACTクリニック)
メインコーディネーター:渡邉 真里子(ちはやACTクリニック)
サブコーディネーター:西尾 雅明(東北福祉大学総合福祉学部総合福祉学部)
2022年に国連から出された障害者権利条約の対日調査において、「障害者が地域社会で自立して生活するために、入所施設から地域へ予算を再配分するよう調整し施設収容に終止符をうつ」ことが勧告された。2017年に厚生労働省が打ち出した「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」においても、通院・入院治療とともにアウトリーチ(訪問支援)の重要性が明記されており、国内外で地域に基盤を置いた精神保健福祉の推進が求められている。
重症者を対象とした多職種アウトリーチである包括的地域生活支援(Assertive Community Treatment: ACT)に関しては既に本学会でも何度か取り上げられ、その必要性は共有されているが、地域に基盤を置いた精神保健福祉を現実のものとするには、さらに多様なアウトリーチの形が求められる。そこでは本人の精神症状のみならず、抱えている身体疾患、本人や家族の疾病理解や周囲の協力が得られない等の困難な状況があり、必要な医療や支援が十分に届けられない結果として、入院や施設入所の長期化、自殺リスクの増加、本人周囲の家族や地域住民の負担増が持続していることが多い。しかしながら、アウトリーチが必要とされるケースほど本人や家族が自ら支援ニーズを発信することは難しいため、支援を届けるには精神科医療機関だけでなく、多様な機関が日頃から連携しアウトリーチに取り組んでいくことが肝要である。
さらに、アウトリーチに対する一般の理解が深まり日常の支援として定着するためには、診療報酬制度など支援提供機関にとっての経済的裏付けが欠かせないが、仕組みもめまぐるしく変動するなかで、どの仕組みを使うか戸惑うことも多い。昨今の現状として、訪問診療可能と標榜している医療機関は、精神科病院3%(令和2年7月日本精神科病院協会調査)、精神科診療所31%(令和4年6月日本精神科診療所協会調査)と未だ少なく、身近な診療手段とは言い難い現状がある。
上記の課題を受けて本シンポジウムでは、精神科長期入院患者の退院促進、保健所と連携した認知症を含む地域密着型支援、産婦人科や身体科訪問診療との在宅協働支援、行政・福祉が協働した発達障害支援など、様々な分野で必要な精神科アウトリーチについての実践を紹介する。登壇者は精神科病院、総合病院、精神科診療所、在宅支援診療所、精神保健福祉センターと様々な支援基盤で活動をしている。具体的な支援内容に加え、どのように他機関と連携してニーズを把握し、どのような診療報酬や仕組みを使ってアウトリーチを実践しているか、それぞれの工夫を紹介し、現状でできることと課題の双方を討論できればと考えている。
なお本シンポジウムのコーディネーターおよびシンポジストの5名はいずれも一般社団法人コミュニティメンタルヘルスアウトリーチ協会訪問医療部会の部会員であり、本シンポジウムの企画は一般社団法人コミュニティメンタルヘルスアウトリーチ協会の推薦を受けている。
○大鶴 卓 (琉球こころのクリニック)
○渡邉 真里子 (ちはやACTクリニック)
○植田 俊幸 (鳥取県立厚生病院精神科)