第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム105
統合失調症の睡眠研究の現在 -最近のトピックスと臨床への展開-

2023年6月24日(土) 13:15 〜 15:15 L会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G401)

司会:小曽根 基裕(久留米大学病院精神神経科), 鈴木 正泰(日本大学医学部精神医学系)
メインコーディネーター:鈴木 正泰(日本大学医学部精神医学系)
サブコーディネーター:小曽根 基裕(久留米大学病院精神神経科), 金子 宜之(日本大学医学部精神医学系精神医学分野)

 統合失調症では急性期の8割以上、維持期であっても約半数の患者で不眠を認める。近年、統合失調症における併存不眠症は、QOL低下、陽性症状の出現・悪化、自殺リスクの上昇などと関連することが明らかにされている。従来より、急性期においては十分な睡眠を得ることが早期に状態を安定させる上で重要と考えられてきたが、これらの知見は、再燃・再発予防、予後改善のためには維持期であっても睡眠状態に着目する重要性を示唆するものと考えられる。
 また最近では、不眠症以外の睡眠障害も多く認めることが明らかにされている。閉塞性睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害、概日リズム睡眠・覚醒障害などの合併は多く、これらは病像修飾因子として働き難治化とも関連する。したがって、常にその可能性については念頭におき適切に対応することが必要である。
 長らく統合失調症では各睡眠ステージにおける睡眠脳波は健常者と違いがないと考えられてきた。しかし、2000年代に入りこれを覆す知見が発表された。空間分解能の高い多チャンネル脳波計で統合失調症の睡眠脳波を精査すると、局所的に睡眠紡錘波の出現が減弱している部位があることが明らかになった。睡眠紡錘波の異常は、幻聴や思考解体など統合失調症に特徴的な症状と関連するとともに、学習機能の低下とも関連することが報告されており、病態理解を促進する重要な所見として注目を集めている。さらに最近では、素因を反映するtrait markerとしての側面もあることが報告されており、発症予防・早期発見の観点からも注目されている。
 このように、近年、統合失調症の睡眠については多くの知見が得られており、これらがより良い診療を提供するための足がかりとなることが大いに期待される。本シンポジウムでは統合失調症研究に取り組む気鋭の若手研究者にご登壇頂き、これまでの統合失調症の睡眠研究を振り返った上で、最近のトピックスをご紹介頂く。その上で、近年の研究の進歩をどのように臨床現場に還元していくか議論する。

シンポジストとテーマ
金子宜之(日本大学精神科) 統合失調症でみられる睡眠の問題と臨床経過との関連
松井健太郎(国立精神・神経医療研究センター)統合失調症に生じる睡眠・覚醒リズム障害
水木 彗(久留米大学精神科)統合失調症における睡眠紡錘波異常の病態的意義と今後の展望
伊豆原宗人(国立精神・神経医療研究センター)統合失調症の不眠に対する認知行動療法と生活指導