第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム107
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後精神症状と精神保健施設における対応

2023年6月24日(土) 13:15 〜 15:15 N会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G412+G413)

司会:中尾 智博(九州大学大学院医学研究院精神病態医学), 高橋 晶(筑波大学医学医療系災害・地域精神医学)
メインコーディネーター:中尾 智博(九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
サブコーディネーター:村山 桂太郎(九州大学大学院医学研究院精神病態医学)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的な感染拡大を引き起こし、本邦においては令和4年10月現在、4万5千人以上の累計死亡者を数えている。海外ではCOVID-19罹患と抑うつといった精神症状の関連性が報告され(Deng J. et al.2020, Huang C. et al. 2021.)、米国の保険診療データベースを用いたコホート研究では、COVID-19罹患後に精神疾患罹患のリスクが上昇したことが報告されている(Taquet M et al. 2021)。しかし、本邦ではCOVID-19罹患後に生じた精神症状(以下、「罹患後症状」と略す)に対して大規模なデータを用いた調査の知見はまだ無く、罹患後症状に対して相談を受けている地域の精神保健福祉センターがどのような対応を行なっているのかを調査した報告は無い。そのため、我々は令和4年度厚生労働科学研究費を得て(研究責任者:中尾智博)、罹患後症状に関する疫学的調査ならびに支援策を調査し、将来発生しうる新興感染症パンデミックにどのような精神保健システムを構築するべきか提言を行うために研究を進めている。本シンポジウムの目的は、今後持続的に発生することが予見される罹患後症状に関して参加者に知見を深めてもらい、今後の支援策や精神保健システムをどのように構築するべきか意見を交換することである。第1演者の高橋晶から罹患後症状に関する文献のsystematic reviewによる調査結果を報告し、罹患後症状の世界的な現状を参加者に把握してもらう。第2演者の福田治久からは、4都府県18自治体の約150万人分を追跡した医療レセプトデータを用いて算出した罹患後症状の発生率や他の呼吸器疾患と比較した罹患後症状の発生率について報告し、海外と本邦における罹患後症状の相違について参加者の理解を深めてもらう。第3演者の萱間真美からは、罹患後症状への対応を積極的に実施している精神保健福祉センターでどのような好事例や困難例を経験したのかを報告することで罹患後症状に対する精神保健の現状について参加者に理解を深めてもらう。最後に村山桂太郎から、九州大学が研究協力施設となっており、国立精神・神経医療研究センターで実施されているオンラインメンタルヘルスケアシステム「KOKOROBO」の紹介ならびに今後の同システムの社会的実装に向けた課題について報告し、人工知能によるチャットボットを含んだオンラインシステムと従来の精神保健システムの将来的な相互補完の可能性について報告したい。