○三家 英明 (医療法人三家クリニック)
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シンポジウム
シンポジウム14
多機能型精神科診療所での外来医療の機能強化と地域包括ケア ~療養生活継続支援加算新設を機会に考える~
Thu. Jun 22, 2023 10:45 AM - 12:45 PM J会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G403+G404)
司会:三家 英明(医療法人三家クリニック), 窪田 彰(医療法人社団草思会錦糸町クボタクリニック)
メインコーディネーター:三家 英明(医療法人三家クリニック)
サブコーディネーター:窪田 彰(医療法人社団草思会錦糸町クボタクリニック)
今春の診療報酬改定で精神科外来診療において療養生活継続支援加算が新設された。医師が通院精神療法、在宅精神療法を実施した月に、専従するMHSWが受療者に対してケアマネジメントを行い必要なつなぎ支援を行った場合に月350点が加算されるというものである。精神科外来の現場で、その役割の重要性を認識して、MHSWを雇用し協働してきた診療所精神科医からすると、驚くほど低い報酬であるとはいえ、ようやくにしてMHSWの業務が診療報酬として認められたことは日本の精神科医療の歴史において、画期的な1歩が踏み出されたと評価したい。今回のこの新設は、2021年6月、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに係る検討会で示されたケアマネジメントを含むいわゆる「かかりつけ精神科医」機能を具体化していくことに符合するものでもあり、その主たる担い手に対する報酬であり、今後、精神科の外来・在宅医療の機能を強化し、地域包括ケアを進めていくための必須条件でもある。振り返れば、2004年に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で「入院医療中心から地域生活中心へ」と声高に謳われて久しいが、障害福祉分野の改革は進んだものの、病院に軸足を置いたまま進められてきた医療改革においては、地域生活において重要な外来医療の改革は後回しにされた。そのため、必要な支援が受けられないまま、通院のみを継続していたり、支援の手が及ばないまま、ひきこもる人たちを多数置き去りにしてしまった。地域の診療所で、こうした人たちのリカバリーを願い、できうる限りの支援をしながら、外来医療を担ってきた立場からすれば、精神科医療改革において、まずなされなければならないのは、精神科医療入り口である地域の外来医療のあり方にこそ、抜本的な改革が必要であると思い続けてきた。とはいえ、遅々として進まない外来医療の現状の中でも、地域の診療所には、精神疾患やさまざまな困難を抱えた人たちが、いつも訪れてきており、待ったなしの状態であった。そうした人たちに向き合い、求められていることに少しでもこたえたいとの思いで、多職種で協働して支援し、体制を作り、また地域に出て、暮らしよい地域を育もうと努めてきたのが多機能型精神科診療所である。各地で診療活動を展開する多機能型精神科診療所は、開設者の理念、地域や時代背景により、規模やスタイルはさまざまである。いずれもが開設者と協働するものとが診療所で求められた支援に対応しようとして作り上げてきた姿であり、外来機能の強化や地域包括ケアの先行的な試みも繰り返してきている。今回は、大阪、浜松、札幌、沖縄の4か所の精神科診療所から、ニーズに導かれて築き上げられてきた多機能型の診療所の実践報告を発表して、改めて、多機能型精神科診療所の今日的存在意義と目指されるべき今後の地域包括ケアのありかたを共に考えてみる機会としたい。また、冒頭に記した療養生活継続支援加算の新設についても、外来医療、地域包括ケアにとって重要なテーマであるので取り上げ、議論を深めたい。
○大嶋 正浩 (医療法人社団至空会メンタルクリニック・ダダ)
○長谷川 直実 (医療法人社団ほっとステーション大通公園メンタルクリニック)
○大鶴 卓 (琉球こころのクリニック)
○名雪 和美 (厚生労働省社会援護局障害保健福祉部精神・障害保健課)